多発性肝囊胞性疾患(polycystic liver disease:PCLD)は,常染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)と常染色体優性多囊胞性肝疾患(autosomal dominant polycystic liver disease:ADPLD)にわけられ,ADPKDは多発性腎囊胞を伴うのに対し,ADPLDは囊胞腎を伴わない1)。両疾患ともにductal plate malformationおよび胆管細胞の繊毛形成不全に起因すると考えられている。多産,経口避妊薬,およびホルモン補充療法が誘因因子として知られている。
初期は無症状であるが,肝囊胞の拡大に伴い,肝囊胞の圧迫による腹部膨満・疼痛,食思不振・嘔吐,労作時呼吸困難,囊胞破裂による腹水,感染などが問題となる。囊胞が肝臓のみに認められるADPLDは女性に多く,中でも出産を契機に発症する例が多い2)。
腹部超音波,CT,MRIなどの画像検査で診断し,遺伝子検査は行わない。肝内に15個以上の肝囊胞が存在すること,また家族歴がある場合には4個以上の肝囊胞が存在することで診断される。ADPKDの診断は「常染色体優性多発性囊胞腎診療ガイドライン(第2版)」に示されたADPKD診断基準を参考に行う1)。ADPKDの診断に当てはまらない多発肝囊胞はADPLDと診断される。多発肝囊胞の分類は直感的に理解しやすく,治療法選択にも応用できるGigot分類を用いる。
自覚症状がない場合は経過観察とする。症状がある場合は造影CT検査,MRI検査を行い,囊胞の数と分布,および肝実質のvolumeを参考にしてGigot分類のI~Ⅲのどれに当てはまるか,分類を行う。その後,肝機能,および門脈,肝静脈などの血管の走行を考慮し治療方法を決定する。Gigot分類は下記の通りである。
I型:囊胞数は10個程度で,肝内の分布は比較的限局している。2区域以上の正常肝容積がある。10cm以上の大型の囊胞が時にある。
Ⅱ型:小型から大型の囊胞が肝内にびまん性に分布し,正常肝容積が2域以上残存している。
Ⅲ型:小型から大型の囊胞が肝内にびまん性に分布し,正常肝容積が1区域より少ない。
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