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(3)多発性硬化症治療の現状と将来展望[特集:多発性硬化症の診断・治療の進展]

No.4912 (2018年06月16日発行) P.41

藤盛寿一 (東北医科薬科大学老年神経内科学准教授)

中島一郎 (東北医科薬科大学老年神経内科学教授)

登録日: 2018-06-18

最終更新日: 2018-11-28

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多発性硬化症の治療においては,発症早期から適切な薬物療法を行い,慢性進行期に至るのを防ぐことが重要である

近年公開された「多発性硬化症・視神経脊髄炎診療ガイドライン2017」では,再発予防と進行抑制のための疾患修飾薬をベースライン薬,第2・第3選択薬に分類している

新規治療をベースライン薬で開始し段階的に切り替えるescalation therapyが基本であるが,疾患活動性の高い患者には第2選択薬や第3選択薬で治療を開始するinduction therapyを考慮する必要がある

1. 二次進行型多発性硬化症(MS)

多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は,その90%以上が再発寛解型MS(relapsing remitting MS:RRMS)として発症し,病初期は再発してもほぼ完全に回復し後遺症はほとんど残らない。しかしながら,軽微な後遺症の蓄積により総合障害度スコアとしてのKurtzke Expanded Disability Status Scale(EDSS)が3.5(歩行制限ないものの中等度の障害)に到達したあたり,すなわち未治療の場合,発症から10~20年で,二次進行型MS(secondary progressive MS:SPMS)に移行する。ひとたび二次進行型に移行すると,慢性的に症状が進行し,ほぼ一定の進行速度でEDSSが年々上昇するといわれている。SPMSの慢性進行を止める治療法はなく,数年~10年程度の経過で車椅子生活(EDSS 7.0)に,場合によってはベッド上寝たきり(EDSS 9.0)となりうる。

MSの病態は中枢神経における慢性的,自己免疫的な炎症であり,平均して数カ月間隔で脱髄斑を形成する炎症病巣が生じる。早期の炎症病巣はMRIで病巣周囲に造影効果を伴う病変として確認することが可能で,病巣出現部位によっては臨床的な症状を生み出し,「再発」と呼ばれる。従来の治療はこの再発をいかに抑えるかが効果の指標になっていたが,近年の治療法の目的は,再発を含むすべての炎症性活動の抑制へと変化している。しかしながら,現在のいかなる治療法をもってしても,慢性的な炎症に伴う神経変性の進行は十分に抑制できず,脳萎縮の進行やそれに伴う慢性進行症状に対してはなす術がない。したがってMSの治療は,再発予防はもちろんのこと,発症早期から効果的に治療を行い慢性進行期に至るのを防ぐことが重要で,是が非でもEDSSを3.0以下に保つ必要がある1)

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