2013/14年期は4年ぶりに出現したAH1N1pdm09型を主流にAH3亜型(香港)を含むA型が先発,少し遅れてB型(山形系統)の後発があり,3型の混合流行になった。A型は比較的小規模であるが,B型は3月を主とし4~5月まで長く続いたため,罹患者総数は例年をやや上回った。ここ4年間ではA型に比べB型がかなり多発したので,その抗体保有率は高まったと思う。したがって,今後は抗原変異したA型株群の流行が危惧される。
昨年末もまたインフルエンザが襲来した。国立感染症研究所(感染研)では,全国の感染症対策係や衛生研究所から送られてくる患者数,型別ウイルス検体数を集計し,時に応じて地方へ提供している。我々臨床医はそれにより流行状況と推移を知り,日常診療に役立ててきた。インフルエンザは気象条件,人口密度,地形,定点医療機関の熱意などにより,各地域の流行情勢・時期・規模に隔たりがあり,全国の平均値を求めた国の実態と地域のそれに「ズレ」が生じるのはやむをえない。したがって,地域に密着した情報を的確に知るには,よりきめ細かな調査も必要であろう。四方を山に囲まれ周囲との交流が比較的少ない人口約24万人の松本市は,四季の変化に富み疫学的調査には好適な環境と言える。
2013/14年期は2009~10年に流行した,いわゆる新型のAH1N1pdm09を主流にAH3 亜型(香港)を含むA型が先発,B型(山形系統)が後発する3型の混合流行であった。特にB型の流行が目立ったので,ここ数年間の実態と対比しつつ報告する。
調査はインフルエンザの流行期間である2013年11月から2014年5月末までの7カ月間とし,国の定点医療機関である当院と松本市全域の小・中学校のインフルエンザ治癒証明書届け出数を調査対象とした。当院は小児科専門のため年齢的比較調査に少し偏りがあるのは否定しない。なお,2002/03年以来,インフルエンザ診断には迅速診断キットを恒常的に使用しているが,家族間発生には臨床診断することもあった。
2013年12月末,幼児2名(迅速診断でA型)罹患に遭遇,年末年始休暇明け2週目から急増し,5週には100名近くに達したが,6週にやや減少し7週には急減した。このまま小規模に終わるかと思われたところ,8週から再燃,11週まで横這い,13週から減少したが,3月末の学年末休みを越えて4月中旬から5月中旬まで長期間局地的な流行を繰り返した。
児童数1万3736名。1月後半から5.9%と急増,2月前半6.4%,後半5.1%とほぼ同程度に持続したが,3月前半は9.2%と急増した。4月2.8%,5月0.5%と軽度ながら持続し,累積罹患数は4214名(30.7%)と例年に比べ高い発生率であった。
生徒数7838名。1月後半2.3%,2月前半3.1%,後半2.4%と徐々に増え,3月前半は3.9%で最も多く,4月1.5%,5月0.5%で,累積罹患数1085名(13.8%)は例年とほぼ同程度であった。
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