Aを選びます。チョコレート囊胞(CC)合併不妊では,手術による卵巣機能低下が懸念され,特に,近年の挙児希望年齢の上昇を背景とした症例では,手術によるいっそうの卵巣機能低下を回避したいのが実情です。その一方で,CCへの感染リスクやCC存在による卵巣機能低下に対しても検討が必要です。私は不妊治療に先立った手術治療の選択を提案します。
子宮内膜症では,癒着による器質的障害とサイトカイン等による配偶子および胚に対する機能的障害により妊孕能が低下する。その約50%に不妊を認め,不妊症患者の30~50%に子宮内膜症が存在する。薬物療法では排卵が抑制されるため,不妊治療中に選択されない。
子宮内膜症症例における妊娠率は,無治療症例<病巣摘出術施行症例であり,一般不妊治療(図1)では腹腔鏡手術が推奨され1),卵巣子宮内膜症であるチョコレート囊胞(chocolate cyst:CC)摘出術後の妊娠率は30~67%である2)。
生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)では,出生率(live birth rate:LBR),臨床的妊娠率(clinical pregnancy rate:CPR)に有意差はない3)。したがって,ARTであればCC摘出術は必須ではない。採卵に伴う骨盤内炎症性疾患(pelvic inflammatory disease:PID)の発症頻度は0.3~0.6%程度に存在し,抗菌薬投与による保存的治療の成功率は67~75%であるが4),奏効しない症例ではドレナージと感染組織の摘出が必要となり,卵巣膿瘍を生じた場合には卵巣摘出に至ることがある。
また,平均採卵数(mean number of oocyte retrieved:MNOR)は,CCのある患者では,CCのない患者に比較して有意に少ないという報告があり,CCの存在自体が卵巣機能低下を増長する可能性が推察される3)。