私は医師実地修練を受けた昭和39年から診察では胸部打診をルチンに行うことにしています。当時「肺炎の患者でX線写真よりも打診での濁音が先に出る」と小児科の雑誌に国分義行慈恵医大教授が書かれていたのが契機です。自分でも何度も体験しましたし、今は同じことがSapira’s Art&Science of Bedside Diagnosisにも書かれています。
昭和41年に13歳の男児の前縦隔腫瘍の患者さんを受け持ち、打診所見の経験をしました。其の後、偶然ですが13歳男児の縦隔腫瘍の患者さんを2例、経験しました。これまた偶然ですが2人とも土曜日の初診でした。
第1例は、1カ月以上咳が続き近医で加療を受けていましたが、咳き込んで苦しいとして午前3時に来られました。胸部打診で中央濁音界が上部で拡大していて、直ぐに診断できました。第2例は、頸部が痛いとして整形外科を受診し、胸部X線写真を撮られて異常なしと判断されましたが、母親はもう一軒と考えて午後に受診されました。打診でやはり中央濁音界が上部で拡大していることと、顔をよく見ると軽度浮腫があると判断されたので上大静脈症候群と考えました。
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