「肝癌診療ガイドライン 2017年版」(第4版)の治療アルゴリズムは,2013年版(第3版)までの科学的根拠に基づく治療アルゴリズムとコンセンサスに基づく治療アルゴリズムが1本化されてつくられた
治療アルゴリズムでは,肝予備能,肝外転移,脈管侵襲,腫瘍数,腫瘍径の5因子に基づいて推奨治療が選択される
肝予備能の指標としてはChild-Pugh分類が用いられ,肝切除を考慮する場合はインドシアニングリーン(ICG)検査を含む肝障害度による評価が推奨される
肝癌診療ガイドラインは厚生労働省診療ガイドライン支援事業により「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン作成に関する研究班(班長:幕内雅敏)」によって,evidence based medicine(EBM)の手法を原則として2005年に初版が刊行された1)。その後,日本肝臓学会に改訂作業が引き継がれ2009年に第2版が,2013年に第3版が改訂・刊行された。第3版まで,ガイドラインの中心である「治療アルゴリズム」はEBMの手法で策定されていた。一方,多様な内科的治療の実情をより反映したいわゆる「コンセンサスに基づく治療アルゴリズム」が2007年に発表され,その最新版は肝癌診療ガイドラインの治療アルゴリズムとともに日本肝臓学会編集の「肝癌診療マニュアル第3版」2)に掲載されており,日本肝臓学会から2つの治療アルゴリズムが発信される状態であった。
「肝癌診療ガイドライン2017年版」(第4版)の治療アルゴリズム(図1)3)は,このダブルスタンダードの状態を解消し,EBMの方法論を尊重しつつエビデンスと実臨床で得られたコンセンサスを取り入れ,かつ,新たにエビデンスの質と推奨の強さを評価する国際的な基準であるGRADE(Grading of Recommendations Assessment,Development,and Evaluation)システムの方法を一部導入し,推奨治療が決定された。