国を挙げて在宅医療が推進されてきた。2006年に創設された在宅療養支援診療所制度の柱の1つは「24時間365日対応」である。在宅患者さんにとっては大変心強いフレーズだろう。さらに外来診療でも、かかりつけ医機能の要件の1つに時間外の電話対応が謳われている。しかし昨今の働き方改革という視点から見ると矛盾だらけに感じる。もし1人の患者さんに本気で24時間365日対応しようとするとどれくらいの医師数が必要なのだろうか。計算すればすぐに分かることだが、労働基準法に従って雇用するなら4人の常勤医を確保しなければいけない。
では常勤医3人で届け出ができる機能強化型在宅療養支援診療所はどうだろうか。実は常勤医3人でもっても、あるいは3つの医療機関の連携をもってしても厳密に言えば労基法を満たすことができない。大半の在宅療養支援診療所は1人医師(1馬力)なので24時間365日対応は無理だ、と自重するほうが、自然な姿なのかもしれない。事業主には労基法が適用されないので、院長自身が自己犠牲を払うなどして何とかやりくりしているのが「24時間365日」の実情であろう。筆者も「24時間365日対応」を20年以上たった1人でやっている。訪問看護師の疲弊を防ぐため、深夜帯のファーストコールも私に転送するようにしている。深夜帯は私の携帯電話1本になるので、いつも枕元に置いて寝ている。講演や学会で出張するときは、とりあえず私が電話を受けて他の医師に「セカンドコール」をお願いしている。このように多くの在宅医の最大の悩みとは技術でも、コミュニケーションでもない。深夜の電話や往診対応ではないだろうか。