膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)は,膵嚢胞性疾患に分類される腫瘍である。IPMNは,膵管上皮において粘液産生能を持つ細胞が,乳頭状に発育し嚢胞を形成する。IPMNの多くは経過観察可能であるが,中にはIPMN由来浸潤癌や,IPMNに併存する膵癌が発生することが知られており,外科的切除適応の決定が臨床上重要となる。また,外科切除の適応とはならない症例においても,経過観察法や検査の間隔,経過観察継続期間ついては議論の余地が残っており,特に併存する膵癌をいかに早期に診断するかは大きな課題である。本特集では3名のIPMN診療の専門家の先生方に1)最新のIPMN国際診療ガイドラインの基準に基づくIPMNの手術適応,2)IPMNの経過観察法と検査間隔,3)IPMNに合併・併存する膵癌とその診断法,のまさに日常臨床において重要な課題である3項目についてご執筆いただいた。当然ながら,まだまだ十分なevidenceがあるとは言い切れない領域であるが,いずれの論文も手術適応となる,または経過観察となりうるIPMNをどのように診療すべきかについての必要かつ十分な情報が網羅されている。本特集がIPMN診療に携わるすべての臨床医にとって日常診療の一助となると幸いである。
1 IPMNの手術適応 ─最新のIPMN国際診療ガイドラインの基準
中村 聡,大塚隆生*1,中村雅史*2(九州大学大学院医学研究院臨床・腫瘍外科 *1准教授 *2教授)
2 IPMNの経過観察法─最適なモダリティと間隔,期間は?
花田敬士*1,南 智之*2(JA尾道総合病院消化器内科 *1診療部長/内視鏡センター長 *2部長)
3 IPMNに合併・併存する膵癌とその診断法
鎌田 研,竹中 完*1,工藤正俊*2(近畿大学医学部附属病院消化器内科 *1講師 *2主任教授)