2018(平成30)年4月13~15日、京都市において第115回日本内科学会講演会を「明治維新150年目の内科学:難治性疾患への挑戦」というテーマで開催させて頂いた。
小生は、1949(昭和24)年に設立された広島大学医学部医学科の卒業生である。昨年までの延べ114回の会長(あるいは、会頭)には、戦後に設立された65大学医学科の卒業生は1人もおられなかったので、小生がこの学会の会長を拝命するなどということは想像さえできない光栄なことであった。
会長に選んで頂いた原因を推し量ってみると、第一に、間質性肺炎の血清マーカー“KL-6”を発見、臨床応用に成功し、同時に世界に発信した研究成果(現在、日本・欧州・中国で診断薬として認可されている)であろう。間質性肺炎は胸部CTを使用するフラミンガム心臓研究などの住民コホート研究では、住民の7~9%に存在することが指摘され、従来考えられていたよりも一般的な疾患であることが証明されつつある疾患である。第二に、本学会の若手内科医が発表する症例報告への質問・コメントを会場において熱心に行ってきたこと、第三に、学会の研究・診療・組織運営に対しては直截的意見を述べ続けたことであろう。
さて、昨年のノーベル生理学・医学賞に決定した本庶佑先生とはゴルフをご一緒させて頂いたことがある。エージ・シュートはアマチュアゴルファーの念願であるので、小生も本庶先生ともども早く達成したいと願っている。
本庶先生の講演を拝聴するたびに思うのだが、「科学研究は人類にとって非常に大切なものである」ことを常々指摘されている。科学研究につぎ込む精力と資金の多寡は、その国のintelligenceのレベルの指標と考えてもよいのではなかろうか。ところが、わが国の研究者が執筆した論文数やTop 10論文数の世界に占める割合が、先進諸国と比べるとあまりにも急激に減少していることは、国のintelligenceの低下、それに基づく独創的発想を持った人材の減少を意味しているのではなかろうかと、心配になる。
独創的研究は独創的な発想を持つindependentな個人あってこそ為しえるものである。民主主義の賜物でもある。19世紀半ばにシャーロット・ブロンテが著した長編小説『ジェイン・エア』の一節に好きな言葉がある。テンプル先生が寄宿学校に預けられたジェインら恵まれない子ども達に言った言葉である。これを紹介して、稿を終えたい。
“Intelligence and proper education will give you independence of spirit”