私の恩師は1999年に第35回日本肝臓学会総会、2003年に第89回日本消化器病学会総会の会長を歴任した故・藤原研司先生である。
1994年に東京大学から埼玉医科大学へ赴任した際、私は有無を言わさず拉致されて、両学術集会の事務局長を担当させられた。そのご褒美として、1999年の総会では、シンポジウム司会の役割を頂いた。当時の日本肝臓学会は、まだ秋の大会がなく、学術集会は春の総会のみであった。また、総会の主題演題は、シンポジウムとパネルディスカッションがそれぞれ1つのみであり、30歳代の若輩抜擢は前例がなかった。豪放磊落な藤原先生の提案に、異論はでなかったようである。
この時の経験が礎となって、現在の私がある。長くて短い20年。今年は第55回日本肝臓学会総会を、2021年には第107回日本消化器病学会総会を担当させて頂く。恩師の大胆な策は、20年後につながった。今年の総会のテーマは「未来につなぐ肝臓学:20年後を見据えて」とした。全25の主題演題では、エスタブリッシュメントによる基調講演を行わない。評議員になる前、40歳前後のいわゆるアラフォー会員を男女1人ずつ、各主題演題の総括として登用する。自分の専門分野を、今後どのように発展させるのか、空想を交えてでもよいから語って頂きたい。20年後の総会に、私が出席できるかどうかはわからない。しかし、未来を担う肝臓病、消化器病の専門医、研究者が、その中から誕生することを期待する。