今、大学機構をはじめとし、各分野でガバナンスの強化が進められている。ガバナンスの強化は組織強化とも受け取れ、また、リーダー論にも結びつく。ガバナンスなしでは組織の強化がなされないことは自明であり、少子高齢化・人口減少社会において将来への不透明さからの不安を組織として取り除くためには、組織の大小にかかわらずガバナンスの担保は必須である。その中で、私見として「組織論」について述べたい。
組織とは、『組織と管理』の著者である米国のチェスター・バーナードによれば、組織の3要素として、①共通の目的を持っていること(組織目的)、②お互いに協力する意思を持っていること(貢献意欲)、③円滑なコミュニケーションが取れること(情報共有)、を挙げている。つまり、高い付加価値を提供するために貢献する意欲がある人たちが、円滑なコミュニケーションを行う集団のことを「組織」と呼ぶ、としている。
また、法学者の河上和雄先生によれば、群れを飛び出しても生きていけるような人間が集団をつくったとき、その組織は強くなる、と述べている。
これらの内容についてはまったく同感であるが、組織にとってあと1つ必要なものは、最悪の状況を常に想定し、それに対しての対処を持つことと思う。また、組織として強化するためには、どのような人材が組織内に配置できるのかが鍵になる。それについて、興味ある組織に属する人間の4つの分類があるので、紹介したい。
①有能な怠け者─組織のトップや管理職向き、②有能な働き者─組織のブレイン、参謀向き、③無能な怠け者─平社員向き、④無能な働き者─リストラすべき、である。
ここで言う有能な者とは、自分の過ちや能力不足を素直に認め、改善のための努力ができる者であり、無能な者とは、自分の過ちや能力不足を絶対認めず「俺は何も悪くないのに」とか思ってしまう者である。
有能な怠け者がリーダーとして相応しい理由は、怠けることができる余裕と怠けることによって部下にのびのび活躍できる場が提供できる、と理解した。当然、部下の失敗については自分が責任を取る、という条件も含まれていると思う。一方、無能な働き者はリストラすべき、という意味は、能力もないのに組織の理念、主張を理解せずに働き回ることが組織にとり百害あって一利なし、とのことであろう。
少々きつい文言ではあるが、組織に身を置く私として、無能な働き者の意味を十分噛みしめ、襟を正し医師会活動に邁進していかねばならぬ、と気持ちを新たにしたところである。