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教授職冥利につきる[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.37

山口成良 (松原病院名誉院長/金沢大学名誉教授)

登録日: 2019-01-03

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金沢大学医学部同窓会会報に、今度某大学の旧神経精神医学講座の教授になられた先生の教授就任の挨拶が掲載されていて、その文章にびっくりするとともに、嬉しくも思った。その内容は次のとおりである。

「私は高校を卒業した後、金沢大学医学部に進学致しました。山口成良教授が主宰されていた当時の精神医学教室の学生講義は、まだ階段講堂の中央に患者さんを連れてきて、皆の前で診察することが行われていました。その中に交通事故後で目が見えなくなったと訴える患者さんがいました。いろいろな検査をしても異常がみられず、しかし現実には症状がある。このように不思議な、しかし患者さんにとっては非常に生活が障害されている状態を見て、精神医学に大きな興味を憶え、この道に進むことを決めました」。

すなわち、私の臨床講義を聞いて、精神医学に大きな興味を持ち、この道に進むことを決心し、今度教授になられたということである。講義をした私としても教授職冥利につきる、という感銘を受けた。私は、教授時代は講義録をみるということはせず、その日講義することはすべて頭の中に収めて講義した。今度某大学の教授になられた方は、私の講義で胸にふれるものがあったのかもしれない。

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