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少子高齢過疎化対策として、小児科医だからできること[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.93

是松聖悟 (大分大学客員教授/中津市立中津市民病院副院長)

登録日: 2019-01-06

最終更新日: 2018-12-26

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総務省は2055年には総人口が1億人を割り込み、高齢化率は40%弱となることが予測されている。各種企業、学校、医療機関、市町村などは今後、統廃合されていくのであろうか?その流れはいたしかたないかもしれないが、私も含め、自分が生まれた市町村、通った学校がなくなっていくことを簡単に受け入れることができるのだろうか?

私は、2008年に、大分県からの委託講座「大分大学医学部地域医療・小児科分野」の教授を拝命した。少子高齢過疎化の進む市町村における小児医療の充実を託されたのである。大分県には18市町村あるが、大分市、別府市に子どもの半数以上が集中している。その中で、それ以外の市町村で何をすべきかを見定めるには自らがその地域に赴き、小児医療、保健、福祉、教育、保育の現場を見ることが必要と感じた。大学教授でありながら、週2~3回、過疎地域を巡回した。愛車の走行距離は、現在まで年間2万7000km前後である。

地域では、中核病院はもちろん、保育所、幼稚園、小・中・高・特別支援学校や、各種の会議、また、こども食堂、地域のお祭りにも顔を出した。それだけでなく、各地域の中核病院専門外来や乳幼児健診も担当し、過疎地域の子どもが大学病院と遜色ない医療を受けられるようにした。さらには、地域に勤務する先生方とともに、市報や市民公開講座で、こどもが健康であるために何をすべきかを啓発した。そのテリトリーは、感染症、アレルギー、発達障害、在宅医療、生活習慣病、救急、虐待、貧困、震災、病児保育と多岐にわたった。

その活動の成果として、任意予防接種を公費助成した市町村では、感染症が減り、費用対効果があがり、驚くべきことに出生数まで増えた。また、発達障害児支援に努めた市町村では、不登校児童が減った。アレルギーのある子も安心して学校給食を食べることができるようになった。これらは英文、和文で論文化して発表している。さらに、過疎地域医療に従事する小児科医の論文数も増え、医学博士論文も輩出しえた。

子どもは減っている。しかし、小児科医がすべきことはまだまだたくさんあり、首がまわらない。しかし、私の走ってきた姿を見て、さらに過疎地域を盛り上げようしてくれる後輩が増えてきた。

総務省の将来の人口予測を少しでも覆そうと、過疎地域から目論んでいる。

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