細菌感染症の確定診断は難しい。最近、プロカルシトニンやプレセプシンが用いられるが、陽性でも診断には至らない。現在でも、細菌感染症の診断は、培養検査が主体である。
生体内で、細菌から身を守る最大の役割を担っているのは好中球である。したがって、細菌感染症において、好中球の動態を検査する考えは的外れではない。実際に、左方移動(桿状核球が白血球数の15%を超える)が細菌感染症の検査として使われていた時期もあった。最近は、検査としての感度・特異度が低いとされ、使われなくなった。
実際は、血中の好中球動態は詳細に細菌感染症を反映している。細菌感染症が生じると、好中球が細菌を貪食するために血中から細菌巣に移行する。そのために、感染初期(発症12~24時間)に好中球は減少する。その後、骨髄から供給されるようになると需要と供給のバランスに左右され、消費以上に供給されれば好中球数は増加する。多くの細菌感染症は、この状態で好中球が増加している。
一方、好中球数が減少すれば、消費が供給を上回り、患者の状態は悪いと判断する。左方移動は、骨髄プールの成熟好中球が減少したため、幼若好中球の桿状核球、後骨髄球、骨髄球が順じ血中に供給される所見である。高度な左方移動は、細菌巣で好中球消費が増大し、骨髄で好中球産生が亢進する所見を表している。
「好中球数増加+左方移動あり」は、好中球を消費する病態(細菌感染症)があるが好中球は十分供給され、状態は悪くない。一方、「好中球数減少+左方移動あり」は、好中球を消費する病態はあるが十分好中球を供給できず、状態は悪いと判断する。好中球数と左方移動は連続数で、数値で前回値との比較が可能で、細菌感染症の改善もしくは増悪をリアルタイムに判定できる。抗菌薬使用後、早期にその選択の是非を判断できる。白血球数の急速な変化は好中球数に左右され、好中球数の代わりに簡便に得られる白血球数を使用してもよい。