日本は世界に誇る長寿国であり、世界一の健康寿命(男性72.24歳、女性74.79歳)を誇っている。しかし、男性の平均寿命は80.98歳、女性は87.14歳であり、男性で約9歳、女性で約12歳の差があり、国民が望む健康寿命の延伸のためには更なる対策が望まれる。
厚生労働省ではその対策として、生活習慣病、特に高血圧、糖尿病、脂質異常症の発症・増悪防止を重視してメタボ健診に力を入れ、かなりの効果を上げてきた。しかし、近年悪性腫瘍による死因は増加の一途をたどっており、日本人の死因の60%以上は悪性腫瘍が関係したものである。治療薬の開発が進み、重粒子線や陽子線といった放射線治療も進歩し、かなりの延命効果がみられているが、健康寿命の延伸のために最も重要なことは、悪性腫瘍をいかに早期に発見して、外科的に切除することである。
最近は、遺伝子検査や優れた腫瘍マーカーの開発、さらに画像検査の著しい進歩により、悪性腫瘍の早期発見対策は着実に進歩がみられているが、最も大切なことは国民の認識である。国民が1人でも多く健診や人間ドックを受けて悪性腫瘍の早期発見に努めることである。
厚生労働省の国民生活基準調査(2017/2018年の「国民衛生の動向」)によると、健診やドックの受診率は、2013年62.3%が、2016年には67.3%に増加している。その受診状況を年齢別にみると、30歳代の男性74.9%、女性56.2%、40歳代は79.6%と67.7%、50歳代は79.9%と71.0%。しかし60歳代は70.6%と65.1%と減少しており、70歳代では64.2%と63.0%で、悪性腫瘍の頻度がまだ高い60歳代で受診率が減少してきているのが問題である。働き盛りのときには職場健診が重視されていることが考えられるが、退職後もドック検査を受けることの重要性を知ってもらいたい。
国にしても、健診や人間ドックの重要性を強調し、全国でいろいろな形で健診対策に力を入れてきているが、退職者に対しては財政的な面での負担を考慮して健診を受けやすくすることと、主婦に対しても一層の対策が望まれる。このような努力で日本人の健康寿命が着実に延伸し、いつまでも世界一の健康寿命を維持してもらいたい。