最近、画像検査を行った際の診断報告書を確認しておらず、主治医が想定していなかった診断所見に気づかず、治療の遅れにつながった事例が続けて報告されています。私の専門分野が放射線診断ということもあり解決策を考えるものの、いくつか困難な点が存在するのも事実です。
放射線診断医が臨床的に想定されていない所見を指摘することは以前からありましたが、なぜ最近注目されるようになったのか。要因の1つとして電子カルテの普及が挙げられます。一昔前はシャウカステンにフィルムを並べて読影し、手書きのレポートをフィルム袋に入れ、主治医(検査依頼医)に届ける、といった工程を行っていました。この頃はフィルムとレポートがセットで届いていたため、前述したような事例は少なかったのでしょう。
電子カルテになり、CT/MRIなどの検査終了直後より主治医は画像を閲覧できますが、診断レポートが送られてくるまでに時間差が生じます。当日にレポートが完了する病院はまだしも、数日後に届く施設では必然的に確認不足の可能性が高くなります。当院は幸いにも放射線診断専門医が少なくないため、今年度からは画像管理加算3も取得しており、原則的に検査当日に読影を完了しています。それでも確認不足の可能性は残ります。レポートが届く前に外来患者さんの診察が終わるときは、主治医によるレポート確認は後日になります。
当院では、緊急性を要する想定外の所見に遭遇した場合には、主治医に直接連絡するよう努めています。また、緊急性を要さない(1カ月程度は待つことができる)想定外所見に関しては、月末に各科ごとにまとめて伝える、というシステムを取っています。
本来であれば、既読管理システムがすべての電子カルテに標準装備されていることが望ましく、近い将来には必須になるでしょう。それまでは画像診断を注意深く、かつ迅速に完了し、想定外所見の質に合わせて臨機応変に対応していくことが必要と考えます。