北米で過剰医療に警鐘を鳴らすChoosing Wisely キャンペーンが注目されていることを知って約6年、Choosing Wisely Japan 設立(2016年10月)に漕ぎ着けて2年余りが経過した。2012年に米国内科専門医機構(ABIM)財団によって始められたこのキャンペーンは、2014年には欧州からオーストラリア、ニュージーランド、日本を含む西太平洋地域まで広まり、2018年には Choosing Wisely International の国際円卓会議に25カ国が参加するに至っている。東アジアでは日本に加えて韓国、台湾でもキャンペーンが始まったところである。
ところで、このキャンペーンが注目されたのは、各専門学会に、職能団体の社会的責務として、それぞれの領域でよく行われているにもかかわらず有用性が証明されていない主な診療行為を「5つのリスト(Top Five List)」として提唱するように呼びかけたところ、大部分の学会が賛同してそれぞれのリストを公開したことによる。そして、このリストを背景に、日常診療の現場で、検査や治療が本当に役に立っているのか、かえって害はないのか、他の対処法はないのか、実施しなかったらどうなるのか、など、臨床家と患者・家族との対話を促進することがこのキャンペーンの本旨である。
また、キャンペーン成功の秘訣に“Choosing Wisely”というキーワードがある。常用英語では、wise には、単に聡明であることを指すsmartと比較して、思慮深いとの響きがある。私達は、素直に「賢明な選択」と訳したが、当初、「賢い」には、上から目線が感じられるなどの意見もあった。一般国民の間にも少しずつ知られるようになったが、「熟慮」に基づく共同意思決定(Shared Decision Making)を示す言葉として「賢明な選択」が受け入れられるように、今後も地に足のついたキャンペーン活動を続けていきたい。