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わが国の臨床研究の再活性化に向けて[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行)

藤原一男 (福島県立医科大学多発性硬化症治療学講座教授/脳神経疾患研究所多発性硬化症・視神経脊髄炎センターセンター長)

登録日: 2019-01-04

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このところ毎年のように日本の研究者がノーベル賞を受賞していることは誠に喜ばしい。しかし一方、国際的な科学論文の数や引用数のランキングにおいて、近年わが国の地位は低下している。私の専門分野である神経内科をはじめ、臨床研究もその例外ではない。診療業務は高いクオリティーを要求され複雑化しており、臨床医はかなりの時間を診療に割いている。そして臨床研究の倫理を順守し、継続的に研究費を得て臨床研究を世界に発信していくには、さらに多くの時間と労力を要する。

勤務体制や研究費(助成した研究の適切な評価も重要である)をはじめシステム改革は必須であるが、それとともに日本の若い臨床医が臨床研究に魅力を感じ、真理を追究しようとするマインドを、様々なレベルで醸成していかなければならない。

日本神経治療学会では、新薬の治験や創薬を推進するため産官学が協力して“PMDAジョイントシンポジウム”を毎年開催している。また、臨床研究デザインワークショップでは、若手の臨床医が臨床研究の立案から実施に至る過程を学ぶことができるし、今年から“Let’s debate in English”というワークショップで、参加者を異なる2つの意見の立場に分け、英語で相手を論破する企画もスタートする。科研費申請のコツや英文論文の書き方などの講習会を行っている研究施設や学会もある。無論、究極的には研究グループ内での発案や議論が自由活発に行われなければならない。
過去に、わが国から発表された新たな疾患概念や根本的な病態の解明や治療法の開発は決して少なくない。わが国の臨床研究を生むポテンシャルは潜在的にはきわめて高く、それがうまく再活性化されれば現在の数倍以上の生産性を達成できるはずである。皆でこの課題に積極的に取り組んでいきたいものである。

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