産婦人科医、小児科医、麻酔科医不足は既に常識となった感がある。一方、米国と比較し最も少ない診療科は放射線科であり、充足率30%にすぎないことは報道されず、世に知られていない。昨今、臨床医が、放射線診断専門医からの画像診断報告書を確認しなかった(できなかった)ために、専門外の異常所見を認識できず診療が遅延した事例が報道されている。患者診察時に報告書の作成が間に合わないのが要因のひとつであろう。画像診断管理加算2という最も厳しい基準でも、「翌診療日まで」に80%の診断報告書を作成すればよく、検査当日の診察に報告書が間に合う施設はごく少数であろう。画像診断医は10~15分かけて胸腹骨盤部(軀幹全体)単純造影CT検査を読影するが、5mm厚画像として400枚、1mm厚のthin sliceでは3000枚前後の軸位断像が配信される。さらに、冠状断や矢状断像が加わり、情報量に圧倒される実感がある。多忙を極める諸科外来診療中、大量のCT、MRI画像を十分に吟味することは不可能であり、画像診断医の責任は増すばかりである。
最近、医学生がAIの導入で画像診断医の仕事がなくなると、他の診療科から指導されると仄聞している。心配はありがたいが、画像診断医はAIを使いこなして生き残ると言うのが現在の常識であり、AI導入を心待ちにしている。現在、日本の放射線診断専門医は米国の2.7倍のCT、MRI報告書を作成している。能力を超えての読影は質的低下に直結する。
上記の問題の裏に、「画像診断報告書に記載がなかった事例」が存在し、今後問題化するであろうことは想像に難くない。新専門医制度において、愛知県での放射線科専門研修医数が16名に制限されたことに憤りを感じていたが、ふたを開けてみると、なんと定員に達しなかった。全国的に放射線科専門医数を充足し、質の高い報告書をタイムリーに配信することを夢見ている。
医学生や初期研修医の方々、AI導入は心配要らないので、是非放射線診断専門医をめざして頂きたい。