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子どもたちの未来を照らす「かがり火」を待つ[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.62

田澤雄作 (仙台医療センター・小児科(非常勤医))

登録日: 2019-01-04

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半世紀前の学生時代(1970年頃)になりますが、「春ひらく つぼみを忘れし わがこころ ふた春ほしく ほそぼそひとり」という歌を詠み、ある友人に色紙に書いて頂き、「花見月の心をうたう」と裏書きを添えて頂きました。その友人から、最近の自然災害の大きさや多さに想いを巡らせたのでしょうか、「なぜそんなに 荒ぶるの ……」自然は怒っているという便りが届きました。一部の人たちが自分の「お金」のために自然を壊し、まことしやかに詭弁を振りかざし、人のこころを踏みつける「邪悪な虚無」が秘かに拡散し増大し、その鎌首をもちあげはじめています。子どもたちの未来を照らす燈はいまだ小さく、松明やかがり火の輝きをじっと待つだけなのでしょうか。

現代の子どもの問題は前代未聞の社会的現象であり、次々とその姿を変えて登場してきます。50年前には、少なくとも現代風の「いじめや不登校」の問題はありませんでした。半ば放置された「子どもの発達」の問題は、フリーター、パラサイトシングル、ニート、現代型うつ病としてその姿を変化させ、ついには「大人になれない」青年の急増(この8年間で20倍、2016年)をつくりだしました。姿は「大人」だが、大人の人間として働くことができない、幼い、病的な自尊心をかかえ、社会性が乏しい、自己中心的なパーソナリティーを抱えた青年です。しかし、多くの大人は、その源が子ども時代に始まっていることを知らぬまま、表面的に断片的に問題解決を図ろうとしていますが、その努力の成果は限定的です。問題の中心にあるのは親子の時間の希薄化であり、それを助長しているのが赤ちゃんの時代からの人工的な養育環境(メディア漬け)、行き過ぎた進学競争、過激な部活動です。

現代の子どもの悲劇の彼方にあるのは、平凡な大人が子どもの権利(幸せ)を尊重せず、周囲に同調し、思考を停止し、子どもの変化を見逃し、あとは無視・無関心を装う「凡庸な大人の愚行」です。しかし、心ある大人は立ち上がり、傷ついた子どもに寄り添い、人間が持つ心の回復力(レジリエンス)を再起させ、燈から松明へ、そしてかがり火への道を開いています。

【参考】

▶ ネット健康問題啓発者養成全国連絡協議会.
[http://www.net-kenkou-youseikyo.com/]

▶ 田澤雄作:メディアにむしばまれる子どもたち~小児医からのメッセージ. 教文館, 2015.

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