【直腸内NSAIDs投与によりERCP後膵炎発症率が低下する】
内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)後膵炎(PEP)は,ERCP関連偶発症の中で最も危惧する偶発症である。診断・治療のために行った処置により,時に重篤な転帰をたどることがあり,胆膵内視鏡医にとって克服すべき課題とも言える。報告により様々であるが,おおむね5~10%前後と,その頻度は比較的高い。
わが国では,ナファモスタット,ガベキサート,ウリナスタチンといった,比較的高額なプロテアーゼ阻害薬がPEP予防に使用されてきたが,その有用性について十分なエビデンスはない。2012年に高用量の直腸内NSAIDs坐薬投与がPEP予防に有用であると報告されたが1),PEP高リスク患者が対象であった。
近年,PEP中等度リスク患者にもNSAIDs坐薬投与が有用であることが報告された2)。NSAIDs坐薬がPEP予防にどのように作用しているかについて詳細は不明であるが,アラキドン酸カスケードを阻害することにより,PEPを予防するとされている。NSAIDsは安価な薬剤であるがゆえに医療経済の面からも推奨されており,わが国でもPEP予防にその有用性が期待されている。
【文献】
1) Elmunzer BJ, et al:N Engl J Med. 2012;366 (15):1414-22.
2) Luo H, et al:Lancet. 2016;387(10035):2293-301.
【解説】
階子俊平,佐々木 裕* 熊本大学消化器内科 *教授