高齢社会の進展に伴って、骨粗鬆症が原因の脆弱性骨折が増えている。我が国の脆弱性骨折の治療の現状と問題点について、日本脆弱性骨折ネットワーク理事長で福島県立医大外傷学主任教授の松下隆氏に聞いた。
脆弱性骨折は、骨粗鬆症、筋力と神経反射の低下で転びやすくなることによって起こる骨折です。中でも深刻なのが、寝たきりの原因になる大腿骨近位部骨折です。特に80歳以上の女性で急増します。
日本では大腿骨近位部骨折が年間約20万例発生しているとみられますが、2040年には年間30万例を超えると推計されます。
大腿骨近位部骨折を起こすと歩行が不自由になるなどQOLが低下し、寝たきりになって全身状態も悪化するリスクが高まるため生存率が下がります。特に、80歳以上の大腿骨近位部骨折患者の2年生存率は50%以下で、骨折をしていない同年代の人に比べて大幅に低下します。大腿骨近位部骨折は命を奪うリスクがあるのです。