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ヨルダンでの医療者案内[エッセイ]

No.4948 (2019年02月23日発行) P.64

岡本洋幸 (在ヨルダン日本国大使館医務官・医学博士)

二見 茜 (国立国際医療研究センター)

登録日: 2019-02-24

最終更新日: 2019-02-19

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2018年3月5日、国立国際医療研究センター特任研究員の二見茜氏が、ヨルダンに来た。日本での外国人患者の受け入れ体制整備の参考のために、ヨルダンにおける医療施設の見学が希望であった。現在日本では、訪日外国人、在留外国人の増加に伴う外国人患者に対応するため、国立国際医療研究センターはじめ多くの病院が外国の方の対応をしている。その後、ヨルダンのEye Specialty Hospital とアラブメディカルセンターの2病院を訪問し(図1)、たまたま同日に大使公邸で行われた国連関係者を招いたレセプションに出席した。

Eye Specialty Hospitalでは、最先端の医療機器を常に揃えており、海外の患者にとっても魅力溢れるものになっている。また、研修医もヨルダンのみならずイエメンの女医がいるなど、国際色豊かである。サウジアラビアはじめ多くの医療ツーリズムの利用があるとのことである。日本大使館員が、眼球打撲で緊急手術になった際にも対応して頂いた。また、病院側の要請で日本人の医師紹介の依頼があったので、日本の原眼科院長である原岳先生を紹介させて頂いた1)

アラブメディカルセンターでは、言語の壁が課題となっているが、医療通訳はいない。院内では多言語を話せる医師が外国人患者の対応を行っている。アラビア語以外に、英語、フランス語、ロシア語が話せる医師がおり、院長自身はロシア語もできるそうだ。

イスラム教徒の患者へは、信仰の問題への対応として、1日に5回祈るのでメッカの方向がわかるようにし、男女別の祈りの場所の準備、適切な食事(ハラル)があると良いとのことである2)
Eye Specialty Hospitalと同じくサウジアラビアからの海外訪問が多い。

日本人旅行者の緊急手術、入院でも対応して頂いた。英語のできない日本人に代わり入院手続き、手術の同席などにも対応した。大使館から近いこともあり、カウンターパートに近い総合病院になっている。
前院長時代から良好な関係が形成されている。

同日、大使公邸において、国連関係者を招いたレセプションが行われた。国連関係者やヨルダン政府関係者などが招待された。ここでは、日本の母子手帳にきわめて大きな関心のあることがわかった。ヨルダン、日本両国の医療を通じた交流は、とても良い影響をもたらしていると感じた。レセプションでも料理が振る舞われるが、食事の内容には十分な注意が払われている。ハラルに可能な限り沿う形で、豚肉などは基本的に出てこない。食事もまた、重要なキーになっている。

追記:ハラルについて
「ハラル」とは、イスラム教徒が食べて良い食べ物のことである。ブタ、イヌなどは食べてはいけないものになる。またウシやヒツジ、トリについても、決められた方法に従い処理されなければいけない。1匹1匹が苦しまないように、また1匹1匹に感謝の言葉を捧げて処理される。たとえば、ケンタッキーフライドチキンはヨルダンにもあるが、すべて1匹1匹決められた方法でヨルダン国内で処理されている。つまり、1匹1匹感謝の言葉を捧げられ処理されている。動物が苦しまないようにとの配慮もあり、電気ショックなどの方法は禁止されている。その反対が「ハラム」であり、食べてはいけないものになる。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、日本はおもてなしの体制を整えている。その1つに医療体制の整備がある。病院訪問後、大使公邸で行われた国連関係者を招いたレセプションに二見氏を招待し、関係者各位に紹介させて頂いた。

おもてなしの医療では、医療設備がしっかりしていることに加えて、言語、食事など考えなければいけない課題が多くあるようである。今回の訪問も少しでも今後に貢献できれば幸いである。

この見解は個人の見解であり、所属する団体のものではありません。

【文献】

1) 岡本洋幸:日渡航医会誌. 2017;11(4):22-3.

2) 第8回太平洋アジア渡航医学学会にて発表. インドネシアの眼科医療, 2010.

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