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膵神経内分泌腫瘍の外科的治療適応とその手術方法に関して

No.4950 (2019年03月09日発行) P.58

里井壯平 (関西医科大学外科学講座診療教授)

大塚隆生 (九州大学大学院臨床・腫瘍外科准教授)

登録日: 2019-03-09

最終更新日: 2019-03-05

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  • 膵神経内分泌腫瘍は比較的稀な疾患であるものの,増加傾向を示す疾患単位です。また,膵神経内分泌癌はきわめて悪性度の高い疾患単位です。世界保健機関(WHO)分類や診療ガイドラインがその診断ならびに治療方法を明文化しているものの,いくつかのガイドライン上で相違点も散見されます。そこで,本分野における第一人者でありオピニオンリーダーでもある九州大学・大塚隆生先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    里井壯平 関西医科大学外科学講座診療教授


    【回答】

    【可能であれば原発巣・転移巣ともに切除することが勧められる】

    膵神経内分泌腫瘍(pancreatic neuroendocrine tumor:PanNET)は,世界保健機関(World Health Organization:WHO)分類2017年改訂版で,病理組織学的検索によるKi-67指数に基づき,G1(Ki-67指数<3%),G2(3~20%),G3(>20%)に分類されることになりました。G1,G2は高分化型腫瘍で,G3には高分化型PanNET-G3と低分化型pancreatic neuroendocrine carcinoma(PanNEC)-G3(膵神経内分泌癌)があります。PanNECの悪性度はきわめて高く,診断時に遠隔転移を伴うことも多いため,治療は薬物療法主体となります。PanNET-G3の病態はまだ十分に解明されていませんが,基本的には切除が行われます。日常診療で経験するものの多くは高分化型Pan NET-G1/G2であり,切除が治療の基本となります。以下,PanNET-G1/G2の外科治療について述べます。

    PanNETはホルモン過剰症状の有無により,さらに機能性腫瘍と非機能性腫瘍に分類されます。機能性腫瘍では,過剰分泌されるホルモンの種類により悪性度が異なることが知られています。インスリノーマの悪性度は低く,膵表面の小さい腫瘍は核出術の適応となりますが,膵実質内の主膵管に近い位置にあるものは膵切除術,腫瘍径が大きく悪性の可能性があるものはリンパ節郭清を伴う膵切除術が必要です。ガストリノーマやグルカゴノーマ,血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal polypeptide:VIP)産生腫瘍などの他の機能性腫瘍の悪性度は高いため,リンパ節郭清を伴う膵切除術が勧められます。

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