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■NEWS 【臨時代議員会で偏在対策を議論】日医・横倉会長は専門医機構認定の23のサブスペ領域を見直す必要性指摘

No.4955 (2019年04月13日発行) P.66

登録日: 2019-04-10

最終更新日: 2019-04-09

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日本医師会の臨時代議員会が3月30日に開かれ、都道府県医師会と役員による医療政策に関する質疑が行われたほか、横倉義武会長は、日本専門医機構が認定している23のサブスペシャルティ領域について、見直す必要があるとの認識を示した。

代議員会の冒頭に挨拶した横倉会長は、専門医制度について「国民に分かりやすいこと、患者さんから信頼される医師の育成制度にすることが目的」と説明。その一方で、日本専門医機構が認定している23のサブスペ領域に関し「領域が一部重なっているなど、国民にとって分かりにくい部分があるのではないか」との懸念を表明した。その上で「制度設計の混乱は、国の関与を強める結果にもなりかねない」と述べ、「3月28日に開かれた日本専門医機構の社員総会で、23のサブスペ領域を見直すよう要望した」と報告した。

4月から医師偏在解消を目的とした改正医療法・医師法が施行されることについては、「医師偏在指標の数字が一人歩きしないよう注視しつつ、都道府県が(今年度)新たに作成する医師確保計画に基づく医師偏在対策の実効性の確保に寄与していく」と意欲を示した。

■かかりつけ医の心は「寄り添う心」「和の心」

このほか横倉会長は、ある取材で「かかりつけ医の心とは何か」と問われた際に「寄り添う心」「和の心」と答えたことを紹介し、「一人の患者さんに対し、多くの医療関係者らが協力して、患者さんの思いに寄り添いながら支えていく。こうした心なくして、超高齢多死社会における医療は立ちゆかなくなるのではないか」との考えを披露した。その上で、平成の次の時代の医療制度を描くには「かかりつけ医の心を全国の医師にしっかりと涵養していただくことが重要」と強調した。

■人生100年時代の医療を模索

さらに、次の時代の医療制度を持続可能なものとして築くことは「未来に対する我々の責任」と述べ、そのために「人生100年時代に即した医療のあり方を模索していく」との方針を表明した。その際に検討する取組として、①地域医療構想を通じた医療機能の分化・連携等の推進、②医師確保対策を通じた医療資源の地域間格差の是正、③医師の働き方改革を通じた医師の健康確保と地域医療を支える各医療機関の継続性の両立、④医師の養成を通じた医療の質の向上と医師偏在の是正、⑤地域包括ケアシステムを通じた切れ目のない医療・介護提供体制の構築─の5つを列挙し、これらを「高度に相関させながら模索していく」と述べた。

医師偏在対策─外来医療の管理統制ではない

医療政策に関する質疑では、医師偏在対策に関する質問が相次いだ。

改正医療法・医師法の施行に向けて、厚生労働省の検討会は先月、医師偏在対策の具体策を「第4次中間取りまとめ」として公表した。この中では、都道府県が今年度設定する「外来医師多数区域」で開業を希望する際には、2020年度以降、「在宅医療、初期救急(夜間・休日の診療)、公衆衛生(学校医、産業医、予防接種等)等の地域に必要とされる医療機能」を担うことを求めることとなった。

これについて茂松茂人氏(大阪)は、国による外来医師数の管理につながることを懸念し、日医の見解を質した。

松本吉郎常任理事は、厚労省検討会の議論の中で「複数の構成員が法的な強制力を持った開業規制を主張していたが、日医は一貫して、強制的手法の回避による対応を求めていた」と紹介した上で、「新規開業医に求める医療機能は、まさに医師会活動そのものだ。地域で必要な医療機能を求める際の協議の場は、郡市区医師会会長が議長を務める地域医療構想の調整会議や、そのワーキンググループとなっている」と説明した。

その上で、「かかりつけ医を養成し、かかりつけ医機能を推進することこそが、医師の働き方改革、医師の偏在是正の最重要施策だ。そのため、地域のニーズの変化に柔軟に対応できる自由開業、自由標榜性を堅持することは日医の使命」と述べ、「今回の外来医療の偏在対策は、医療の管理統制ではない」と強調した。

さらに、医師会非会員の開業医の対応に苦慮しているとの声に対し今村聡副会長は、新規開業医に地域に必要な医療機能を求めることについて「医師会にしかできない事業をお願いする枠組みをつくった。公的な文書では書けないが、そうした医療機能に応えていくということは、結局、医師会に入らないといけないのだと間接的に理解していただくための仕組みだ」と説明した。

森久保雅道氏(東京)からは、地域医療構想など他の医療政策と医師偏在対策との整合性を問う質問も出た。

松本常任理事は、第4次中間取りまとめが医師偏在是正の目標年を2036年としていることを紹介し、その実現に向けて「医師偏在対策と地域医療構想と医師の働き方改革は三位一体」と指摘。「これらの対策が各地域で、整合性をもって行われるよう執行部を挙げて対応する」と強調した。

オンライン資格確認─義務化は断固反対

茂松氏はさらに、医療機関の窓口でマイナンバーカードを用いてオンライン資格確認を導入することを規定した健康保険法改正案が先月閣議決定されたことを受けて、オンライン資格確認に関する日医の対応を質問した。

長島公之常任理事は、「(改正案は)導入可能な医療機関のみが導入することとされている。そのため国に対し、導入しない医療機関に対する批判が生じないような対応や、オンライン資格確認ができない状況では、マイナンバーカード単体では保険証の代わりにならないこと、すべての医療機関でマイナンバーカードを使えるわけではないことなどの国民への周知を求める」と回答。その上で、「オンライン資格確認の義務化や、保険証廃止によるマイナンバーカードへの一本化には断固反対していく」と強調した。

一方、導入医療機関への対応としては、初期導入費用について「医療機関の負担が生じないよう国に働きかけていく」と述べるとともに、「窓口のパソコンは常時オンライン接続になるため、セキュリティを担保する方策を国に打ち出してもらいたいと考えている」と述べた。

消費増税対応─課税転換も選択肢

医療にかかる消費税問題では、2019年度与党税制改正大綱に診療報酬による補塡の精緻化と医療機関の設備投資への支援拡充が記された際に、三師会(日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会)と四病院団体協議会が会見を開き、「現行制度において問題は解決した」と評価した。このことについて、大輪芳裕氏(愛知)が「政府から、消費税問題は解決済みと認識されてしまうのではないか」と懸念を示した。

中川俊男副会長は、「“解決”と会見で言ったのは、非課税制度の中で最大限の着地をしたという意味」と釈明。さらに、増税への対応を議論する中で、医療の課税転換も検討したものの、複数の課題を乗り越える展望が2019年度税制改正まで描けなかったため、今回は課税転換を選択できなかったと説明した。

課税転換による最大の課題としては、「社会保障である社会保険診療が消費として位置づけられることを、国民、医療関係者は受け入れられるか」と述べ、仮に課税転換した場合、消費税分の2.6兆円が医療費として増加するとの試算を披露。「これに伴い、公費、保険料、患者負担が大きく上昇する」と説明した。その一方で、「2.6兆円は国の税収となるので、患者負担や保険料負担等は、この2.6兆円を活用することも選択肢になる」とし、「今後も消費税が上がることが予想されるので、あらゆる選択肢を排除せず、検討していく」との方針を示した。

児童虐待防止─医師の役割の明確化を

利根川洋二氏(埼玉)は、虐待疑い事例における医師の関わり方について日医の方針を質問。道永麻里常任理事は、児童相談所への医師の必置化を盛り込んだ児童福祉法改正案を政府が閣議決定したことを踏まえ、「児相の意思決定に日常的に医師が関与し、対応できる体制を整備するなど医師の権限も含めて役割の明確化が必要」と指摘した。

また、児童虐待の早期発見・早期対応に向け、医師・医師会の積極的な関与や周辺の医療機関の協力が重要だと強調。児相・市町村等が設置している要保護児童対策地域協議会(要対協)の構成員として、「医師会、警察、児相、学校等が挙げられている一方で、地域によっては医師会が参画していない場合がある」と問題視し、自治体等を通じて医師会が要対協に加わることを求めた。

さらに、医師の虐待対応能力を向上させるため、「行政や自治体、学会などが開催している研修への積極的な医師の参加や医師会の協力についても推進していく必要がある」との見解を示し、「日医としても積極的に児童虐待防止に向けた政策提言を行う」と明言した。

挨拶する横倉会長。平成があと1カ月となったことについて触れた際に「昨年、今上天皇が誕生日を迎えられた際、『平成が戦争のない時代として終わることに、心から安堵しています』と御言葉を述べられたことが大変印象深く心に残っている」と話した

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