医師養成システムは、医学部入試から始まり、学部教育、そして医師国家試験に合格後、初期臨床研修とそれに続く専門医研修、さらに生涯学習へとつながる。医学教育の特徴として、その効果判定は長期を要する反面、社会の変化や科学・医学の進歩に伴って常に教育改革を考える必要がある。それを踏まえて、医師養成の近未来を想像してみたい。
医学部入試改革のキーワードは「多様性」と考える。現状は、都市部の富裕層の子弟が医師になる傾向が強い。社会が求める医師は都会の大病院のみならず、地域でコミュニティに根づいた医師も必要とされる。地域枠入試のような、入学者の多様性をさらに拡げる取り組みが求められる。地域枠以外にも、地域出身者枠や低所得者枠、文科系枠、総合診療枠、AIを含む高度情報処理者枠などが考えられる。
学部教育については、モチベーションを高く持ち続けることは難しく、「学内の科目試験」「CBT」などを代用目標として教育していることも少なくない。教育課程を逆にして、まず患者を診察し、そこで感じた疑問を解決するために臨床医学を学び、その深い学びのために基礎医学や社会医学、語学を学ぶスタイルもありうる。医療現場で使える医師を養成するという観点からも魅力ある方法だと思われる。実際、米国の大学でこのようなカリキュラムを始めたそうであり、その結果の報告が待たれる。
残り822文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する