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未来の地域の医療者に伝える言葉[特集:医療の近未来予想図]

No.4958 (2019年05月04日発行) P.58

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2019-05-05

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  • 私が研修医だった平成始めの頃、当時の指導医が「まっちゃん、ついにコンピューターが持ち歩ける時代が来たよ」と言いながら、興奮気味にリュックに入れたApple ClassicⅡを見せてくれたことを覚えている。当時はコンピューターといえば大型計算機のイメージ、持ち歩くなど思いもよらなかったのだが、果たして当時の自分が、手元のスマホに語りかけるだけで情報が検索でき、瞬時にダウンロードできる今の姿を予想できていたかというと、はなはだ心もとない。ということでこの手の予想に全く自信がない私としては、本稿では医療、とりわけ地域医療の近未来に関する個人的希望(むしろ祈りとも呼んでもよい)をおぼろげに描く程度にとどめておくことにしたい。

    外来は、人が出会い、信頼を築くための拠点であり続ける

    高齢化、疾病の慢性化が進むにつれ患者が抱える問題の複雑性は増える一方である。併せて、在留・訪日外国人に限らず多種多様な嗜好や背景の人々へのきめ細かな対応が求められている。患者ニーズは際限なく、ひとたび上がったスタンダードは下がることはない。果てしなく蓄積される無数の臨床情報をふまえた診療が今後必須になっていく過程のどこかで、外来診療の多くの部分が標準化・自動化されるだろう。しかし、それは人間が行う診療が消失することを意味するのではない。むしろ、外来診療は、人と人が出会い、ともに語り、ともに悩み、ともに生きるという、人間しかできない、いや人間こそがするべき対話を通じた交流と触れ合いが主になっていくだろう。たとえ機械を含む他者が間に入ったとしても、人が出会い、そして信頼を築く拠点としての外来診療の意義は、薄れるどころか、ますます重要になっていくだろう。

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