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【論点】費用対効果からみた医療行為の価値 医療における費用対効果の目的は?

No.4963 (2019年06月08日発行) P.56

三宅信昌 (三宅整形外科医院院長)

登録日: 2019-06-05

最終更新日: 2019-06-04

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Bを選びます。「費用対効果」という文言は誤解されて使用されていることが多いと感じます。医療サイドから考える費用対効果は,決して「安かろう,よかろう」ではありません。患者の立場に立ち,いかに健康でかつQOLが高い生活を送れるようになるかを,疾患ごとに費用によって比較検討することが「真の費用対効果」なのです。

1 費用対効果の誤解は2つある

1つ目の誤解は,日本経済の停滞化に伴って,医療費の削減が叫ばれている。このため,「医療経済的に有効」という文言は「医療費削減」と同意語のように使われている。はたして,それが正しいことなのであろうか?

保険医療制度において,医療費は安ければよい,というのは,支払い側(国や保険者)の理論であろう。医療側も同じでよいのだろうか? 医療側は患者の健康,QOLを中心に考え,たとえ高い医療費がかかっても,患者の命やQOLが上昇すれば有効な治療であったと評価すべきである。

もう1つの誤解は,費用という考え方の誤解である。多くの論文では「介入(薬物治療や手術療法,リハビリテーションなど)にかかった費用よりも,将来かかるであろう医療費が削減されれば,費用対効果がある」と述べている。ところが,現実にはそのようなケースは多くない。介入してもその後の追跡診療や検査,追加治療にも医療費がかかり,決して介入した費用よりも将来の医療費が削減されることは,まずありえない。前記理論によれば,言いにくいが,介入した後患者が亡くなった場合に,最も費用対効果があったと判定されてしまう。真の費用とは,介入した費用も将来かかる医療費も合わせての費用なのである。

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