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小関三英(8)[連載小説「群星光芒」161]

No.4748 (2015年04月25日発行) P.72

篠田達明

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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  • 三英さんも「尚歯会」に連なる者として目付の鳥居耀蔵に睨まれていました。

    わたしは一度下役を引き連れて大通りを闊歩する耀蔵を見たことがあります。

    小兵ながらがっちりとした体形、太くて短い手足、猪首の上に載った色黒で四角い顔の左頰に深い傷跡、怪我のためか丸い大きな鼻先が潰れた悪相でした。

    耀蔵の配下で御小人目付の小笠原貢蔵があなたの許にやってきたこともあります。貢蔵は狐のような目をいちだんと吊り上げ、やたらと丁寧な口調で告げました。

    「御目付の鳥居様が貴殿にお目にかかって話を伺いたいと申しておられる。ご足労ながら数日内にお出まし願いたい」

    「はて、なんのご用件か」

    と三英さんが訊ねると、

    「役向きの御用ではないが、内々にお訊きする件がござる。近いうち蕎麦でも啜りながら面談したいと御目付は申された」

    数日後、あなたは去る茶屋で貢蔵を連れた耀蔵と面会しました。その場のやりとりはあなたの覚え帖に再現するかのように詳しく書き留められていました。

    耀蔵は鬢付け油の匂いをぷんぷんさせながらドスの利いた声で申しました。

    「三英殿、あんたは家に閉じこもって蘭書ばかり読んでいるそうだが、一体なにが楽しいのだ。たまには息抜きをしてはどうだ。なんなら面白いところへ案内してやるぜ」

    三英さんは耀蔵をやんわりとたしなめました。

    「さしでがましいかもしれぬが、旗本八 万騎の御目付役である貴殿にとって左様な伝法口調はふさわしくないのでは」

    耀蔵は含み笑いをして答えました。

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