著者・船曵知弘氏は稀代の臨床家である。救急医ではあるが,その中でも救急IVR医の地位を確立し,放射線科医にも名を知られている。多くの患者の命を救ってきたに違いない。
著者・船曵知弘氏は稀代の教育者である。25年前にICLSコース(当時はACLS基礎コースと呼んでいた)で知り合った時から,JPTEC,JATEC,MCLS,JMECC,JETECなど救急医療領域における各種off-the-jobトレーニングプログラムに関わり続け,救急診療における画像診断とIVRの質の向上と普及のため,DIRECT研究会を立ち上げた。このような実績から国内はもとより,広く世界,特にアジアからも知られる存在である。
そんな彼の著作が本書である。しかも2018年に出版された『救急画像診断「超」入門』に加筆,修正を加えられたものである。ここには彼の姿勢のすべて(いや,そのほんの一部か)が注ぎ込まれていると感じる。
前作では内因性疾患を中心に構成されていたが,本書は外因性疾患について追加記述されている。おそらく前作で感じていた不足をいつか解決しようと思い続けていたであろうし,そのために自分が経験した症例を記録に残し,画像も集め続けたであろうことは想像に難くない。
「今に満足せずにさらなる発展をめざす。そして身につけたことを広める」
彼のこういった姿勢が本書に表れていると感じる理由である。
昨今,画像検査の見落とし,特に放射線科医の読影結果の確認不足による治療の遅れが問題となっている。その多くが救急の現場である。放射線科医の読影に期待するところは大きいが,彼らに任せてしまうことなく,現場で働く我々もある程度の読影力は身につけておく必要がある。本書には読影の注意点だけではなく,撮影方法まで記載されており,初学者に優しい。放射線科医不在の状況で救急対応しなければならないとき,本書はその一助になるであろうし,彼の著作,翻訳書はそのような視点で書かれているものばかりなので,ぜひ他の著作も手に取って頂きたい。