がん遺伝子パネル検査の臨床研究に携わった国立がん研究センター中央病院の角南久仁子氏が20日、日本臨床腫瘍学会のプレスセミナーで講演し、今後国内でゲノム診療に関するデータを集積し、検査が有効な症例を明らかにしていく必要性を指摘した。
パネル検査は、がんに関連する多数の遺伝子変異を一括して検出することで有効な治療薬の選択につなげる検査で、今月2製品が保険収載された。保険点数は、検査実施料8000点、検査結果の判断・説明料4万8000点の計5万6000点。対象は、標準治療がない、または標準治療が終了した固形がん患者で、算定回数は1人1回のみ。算定に当たっては患者の同意を得た上で、遺伝子情報や臨床情報などを国立がん研究センター内の「がんゲノム情報管理センター」(C-CAT)へ提出することが求められている。
講演で角南氏は、国立がん研究センターでパネル検査の臨床研究(TOP-GEAR研究)を行った際、遺伝子異常に見合う治療薬投与に結びついた割合は10%程度だったことを説明。その上で、今後のがんゲノム診療について「病院、検査施設、C-CAT、行政が深く関わりながら発展させていく必要がある」と指摘した。
がんゲノム診療を行う病院の課題としては、①適切な症例/検査法の選択、②治療に結びつく割合の向上、③がんが持つ遺伝子異常ではなく、生まれながら持っている、がんの発症に関わる遺伝子異常(二次的所見)が見つかった時の対応、④院内の体制整備・人材育成―などを列挙。このうち、適切な症例については、「すべての患者さんにパネル検査を行う意味があるのかどうかは分かっていない」と指摘。その上で「ゲノム診療とはどういう患者さんに有効なのか、これからデータを出していく必要があるし、その1つの役割としてC-CATがある」述べ、保険診療下でデータが集積される仕組みが構築されたことに期待を示した。