舌炎には,萎縮をきたす舌炎と,構造に異常をきたす舌炎がある。前者には,①萎縮性カンジダ症に伴う正中菱形舌炎,②口腔乾燥症に伴う舌炎,③鉄欠乏性貧血(Plummer-Vinson症候群)に伴う舌炎,④悪性貧血に伴うHunter舌炎がある。後者には,地図状舌と溝状舌がある(後述)。ここでは萎縮をきたす4つの舌炎のうち,①,②について解説する(③,④は別稿参照)。
舌背中央~後方部,分界溝前方に左右対称性の赤みを帯びた斑を呈する。自覚症状は乏しく,時に軽度の疼痛や違和感を認める。病変部の糸状乳頭の消失が特徴である。以前は胎生期における舌の形成過程で退縮すべき無対結節が残存する発育異常とされてきたが,近年では口腔カンジダ症の関与と考えられている。カンジダ培養検査は綿棒を用いて病巣部を数回擦過し,寒天培地に塗布する。
唾液分泌量低下に伴う舌の乾燥感や疼痛,唾液の粘稠感,口腔不快感,味覚異常,口臭を呈する。口腔乾燥症の検査にはサクソンテストとガムテストがある。サクソンテストは,乾燥したガーゼを2分間一定の速度で噛み,ガーゼに吸収される唾液の重量を測定し,2g/2分間以下で陽性と診断する。ガムテストは無味のガムを10分間噛み,その間に分泌された唾液を小容器に集めて測定し,10mL/10分以下の場合,陽性と診断する。
無症候性の場合は加療の必要はなく,疼痛などを認める場合は対症療法として含嗽薬,トローチを使用する。カンジダ培養検査にて陽性の場合は,抗真菌薬を併用する。
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