舌に器質的疾患が認められないにもかかわらず自発痛が持続する疾患の総称である。明らかな原因病変のない口腔内の灼熱感あるいは感覚異常が3カ月,かつ1日2時間を超えて連日再発を繰り返す状態は口腔灼熱症候群(burning mouth syndrome:BMS)とされ,欧米では舌痛症はBMSの一症状と考えられている。40歳以降の女性に好発し,歯科治療後に発症することが多く,がん恐怖症のこともある。症状は舌のヒリヒリ感といった表在性の疼痛,異常感覚で味覚異常を併発することもある。食事中,対話中には自覚しないが,何もしないでいる際に,ふと疼痛が増強されるのが特徴であり,午前中より夕方から夜にかけて疼痛が増悪する。また,口蓋や口唇などに疼痛部位が移動することがある。
舌の色調や機能は正常である。萎縮をきたす舌炎の鑑別のために,血液検査,カンジダ培養検査,唾液量測定を行う必要がある。また,歯列不正や咬耗に伴う歯および補綴物鋭縁,舌癖による舌痛などを除外する必要がある。舌痛は歯科心身症として扱われているため,心理的要因も重要な因子として考えられている(表)1)。
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