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ラダック再訪(その6)─旅の終わりはガンダ・ラ[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(272)]

No.4980 (2019年10月05日発行) P.63

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2019-10-02

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ガンダ・ラという標高4900メートルの峠越え、2泊3日のトレッキングコースを歩いた。十分な高度順応が必要だろうと考えて、スケジュールの最後に設定。

初日は3時間ほど歩くだけなので楽勝。ユルツェという村での宿泊だったが、家はその民宿だけしかない。麦畑を前にたたずむ古びた一軒家。青空に山、白い雲。なんとも鄙びた絶景だった。

峠越えの2日目は天気が悪かった。4500メートルを超えたあたりから、雨に混じって霰が降り出し、峠越えのころには本降りに。ラダックは雨の少ないところなので、ガイドさんは油断してレインウェアを持参せず。完璧にずぶ濡れだった。

あそこのテントで雨宿りをということになった。登山者用ではなくて、定住者のテントである。入り口まで行くも残念ながら住人は不在。あっちゃ~と思ったが、いいから入ろうとガイドさんが言うので、勝手に30分ほど雨宿りさせてもらった。ホンマによかったんかしらん。空き巣やんか。

翌日は快晴!素晴らしいトレッキングを楽しめる、と思ったが甘かった。川がけっこう危ない状態になっていたのだ。増水した川の徒渉を20回あまりも繰り返すのはかなりのスリルだった。

それよりもまいったのは泥だ。水はかなり引いていたのだが、前日に川から氾濫した大量の泥が両岸に残ったままだった。歩くと、あっという間にくるぶしあたりまでズブズブっと沈んでしまうような状態だ。

泥から登山靴を抜くには相当な力がいるし、足をとられそうになる。しかし、やろうと思ってもできない、というより、こんなだとわかっていたら決して来なかったような経験ができて楽しかった。まぁ、今となってはこう書いてますけど、一時はホンマにどうなるかと思いましたわ。

2年連続で同じところへの旅行は初めてのことだった。期待感が強すぎてガッカリするかも、と思っていたが杞憂だった。ラダックは、人も自然も決して裏切らない。

SNSを見ていると、再訪したいという人がやたらと多い。面白いところなのに日本人観光客が少ないのは、きっと、あまり知られていないからだろう。興味ある人はぜひお出かけください。滞在費とかは驚くほどリーズナブルです。それよりも、なんせ、むちゃくちゃおもろいですから!

なかののつぶやき
「麦畑越しに見るユルツェ村の一軒家民宿。聞こえてくるのは、川の音と時々いななくロバの声だけ。ちょっとした桃源郷でした」

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