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慢性歯周炎[私の治療]

No.4986 (2019年11月16日発行) P.58

恩田健志 (東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座講師)

登録日: 2019-11-19

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  • 歯周病とは,歯周組織に発症し,歯周組織を破壊する疾患の総称で,臨床において多く遭遇する疾患としては,歯肉炎,歯周炎,咬合性外傷などがある。
    歯周病の罹患率は高く,人類史を俯瞰するギネスブックに「全世界で最も蔓延している病気は歯周病である。地球上を見渡してもこの病気に冒されていない人間は数えるほどしかいない」と記載されている。
    歯周炎は,歯周病原細菌によって産生される酵素や代謝産物などの影響によって生体の防御機構,主として免疫機能が亢進し,歯肉の炎症性破壊がセメント質,歯根膜および歯槽骨等の深部歯周組織に波及したものである。慢性歯周炎は,主に成人に認められる最も一般的な歯周炎である。
    リスクファクターとしては,細菌因子に加えて宿主因子,環境因子が挙げられ,多因子性疾患としてとらえられる。
    歯周炎と全身疾患とは密接な関係があり,糖尿病,骨粗鬆症,白血病,リウマチなどの免疫疾患などの全身疾患が歯周炎を進行させることがわかっている。
    一方で,歯周炎が心筋梗塞などの心血管疾患,誤嚥性肺炎,低体重児出産・早産,糖尿病などの全身疾患の進行を促進することも報告されている。
    歯周炎は,最終的には歯の強度動揺から歯の脱落に至り,咀嚼障害,発音障害,審美障害をきたす。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    歯肉炎では歯肉の腫脹,発赤,出血がみられる。進行して歯周炎になると歯周ポケットの形成,付着の喪失(アタッチメントロス),歯槽骨の吸収がみられる。歯肉の退縮や増殖を認めることもある。病状が進行すると歯周ポケットからの排膿,口臭,歯の動揺などをきたす。

    【検査所見】

    歯周組織検査所見として,4mm以上の歯周ポケットの形成,歯肉からの出血,進行すると歯の動揺がみられる。画像所見として,歯科用デンタルX線写真およびパノラマX線写真上で歯槽骨の吸収が認められる。細菌学的所見として,Porphyromonas ginigivalis,Tannerella forsythia,Aggregatibacter actinomycetemcomitans,Fusobacterium nucleatumおよびTreponema denticola等が歯周炎の活動部位に多く検出される。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    歯周治療の第一は,歯周病を引き起こす原因の除去であり,この段階の治療を歯周基本治療(initial preparation)と呼ぶ。歯周基本治療として,患者のブラッシングによるセルフケアに加えて,歯科医師,歯科衛生士によるプロフェッショナルケアによりプラークコントロールを行う。補助的に洗口液も使用される。さらにスケーリング・ルートプレーニングを行い,プラークおよび歯石を除去し,病的セメント質を一層除去することにより,炎症・歯周ポケットの改善を図る。咬

    合性外傷があれば咬合調整を行い,外傷性咬合力を除去する。

    歯周治療の第二は,歯周組織の再生であり,歯周外科治療により再生を図る。歯周炎により根尖側に移動したアタッチメントレベルを歯冠側に移動するアタッチメントゲインと,骨吸収により生じた歯槽骨欠損部のセメント質形成を伴う骨新生をめざす。

    歯周治療の第三は,咬合・咀嚼機能の回復であり,これを口腔機能回復治療(oral rehabilitation)と呼ぶ。歯槽骨吸収により生じた動揺歯の固定や重度歯周炎により失われた欠損部へのブリッジ,義歯,インプラントによる顎口腔系の機能回復を行う。

    歯周治療の第四は,口腔内の健康維持であり,これをメインテナンス(maintenance)と呼ぶ。また,一部歯周病が残った場合の治療を,サポーティブ・ペリオドンタルセラピー(supportive periodontal therapy:SPT)という。歯周基本治療,歯周外科治療,口腔機能回復治療により,健康あるいは安定となった歯周組織における歯周病の再発進行を防止し,健康を維持する。

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