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【OPINION】多職種連携でポリファーマシーに対処しよう

No.4800 (2016年04月23日発行) P.18

宮田靖志 (愛知医科大学医学教育センター教授(写真))

矢吹 拓 (国立病院機構栃木医療センター内科)

野呂瀬崇彦 (北海道薬科大学薬学教育系薬学教育分野)

古田精一 (北海道薬科大学社会薬学系地域医療薬学分野)

吉岡靖展 (国立病院機構名古屋医療センター総合内科)

田村英俊 (寿都そよかぜ薬局)

岩田啓芳 (江別市立病院総合内科)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-26

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  • はじめに

    ポリファーマシーという言葉は耳慣れないかもしれないが、以前から多剤併用という言葉で問題視されてきたものである。臨床現場ではこのポリファーマシーと呼ばれるケースにしばしば遭遇するが、充分な対策は立てられてこなかったように思われる。しかし最近、ようやくポリファーマシーに焦点が当てられるようになってきた。

    新専門医制度における内科研修プログラムの中では、ポリファーマシーの知識と症例経験が到達目標のひとつに挙げられている。2015年11月4日には日本老年医学会から『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』が発表された。また、2016年度診療報酬改定では、減薬を伴う指導の評価が新設された。各方面からこの問題に対して本格的な取り組みが始まろうとしている。

    ポリファーマシーとは何か

    ポリファーマシーとは多くの薬剤を服用していることであるが、その明確な定義はない。5剤以上の薬剤使用という定義もあるが、複数の疾患を抱える患者、特に高齢患者が増加してきている今、この定義は適切ではない。Polypharmacy is a “necessary evil”とも言われ、複数の薬を使用せざるを得ない病態が存在する。薬剤の数だけを問題とするのではなく、処方が適切であるかどうかを問題にすべきである。

    適切なポリファーマシーとは、複雑な病態、他疾患併存に対して薬剤使用が適切化され、処方が最良のエビデンスに沿っている場合である。

    一方で問題のあるポリファーマシーとは、複数の薬剤が不適切に処方されていたり、薬物治療の意図する利益が得られていなかったりするものである。具体的には、治療がエビデンスに基づいていない、治療による害が利益を上回る、相互作用のために薬の併用が危険である、内服の負担、薬剤費の負担が患者にとって許容範囲を超える、これらの負担により臨床的に有用な薬物治療のアドヒアランスを得ることが難しい、薬の副作用による症状を治療するために薬が処方される(このことをprescribing cascade と呼ぶ)、などの場合が挙げられる。

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