ラジオ波治療(RFA)は、腫瘍に電極針を刺入し、通電させることで60℃以上の熱を発生させて腫瘍を焼き殺す治療であり、当科では2001年から肺がんに対してRFAを行っている。ところで、肺アスペルギローマは大気中に生息するアスペルギルスが肺空洞内に流入し、そこで増殖して菌球を形成したものである。真菌は通常熱に弱く、アスペルギローマの原因として最も多いアスペルギルス フミガタスという種の胞子は、50~60℃の熱に3~4分間曝露させると死滅する。菌糸はさらに熱に弱い。すなわち肺がんと同様に肺アスペルギローマをRFAで治療することは、理論的に可能である。
しかし、そのような報告はない。エビデンスのないことをするのには勇気がいる。なぜなら様々な不確定要素が残るためである。たとえば、アスペルギローマはしばしば喀血の原因になるが、電極針を刺すことで喀血を誘発しないか、針を刺すことで真菌をばらまかないか、そもそも真菌塊に通電するのか、等である。患者さんによく説明し、倫理委員会の承認を得た上で、上手くいくことを信じて治療を行うこととした。CT画像下に菌球へ電極針の刺入を行い、12分間の通電を行った。
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