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精神科外来でのスマートフォンの利用[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.19

山口成良 (松原病院名誉院長/金沢大学名誉教授)

登録日: 2020-01-02

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精神科外来には睡眠障害を訴える患者さんが多数受診されるが、最近来られた患者さんで、ご主人の足の動きで、横に寝ておられる奥さんが眠れない、ということで受診された。その時、奥さんはスマートフォンを持っておられて、ご主人の足の動きを画面で見せて頂いた。拇指が伸展して背屈し、屈曲する運動を繰り返している。すぐに周期性四肢運動障害の診断が浮かんだ。後日、前頸骨筋の筋電図を含む睡眠ポリグラフ検査を行った。約30秒おきに、1秒ほど持続する筋収縮の繰り返しが記録された。奥さんの持参されたスマートフォンの映像が診断に大いに役立った訳である。

また、妙齢のご婦人が受診されて、主人が私の寝言がうるさくて眠れないと小言を言われる、ということで受診された。どういう寝言ですかと尋ねると、やおら小物入れからスマートフォンを取り出して、自分の寝言を録音したものを聞かせて頂いた。その寝言というのは奇妙奇天烈で、うなりとも違い、表現しようもない発語であった。独り言とも異なっていた。高い発声で、横に寝ている人はその寝言で目覚めることは間違いないと思った。

今後、REM睡眠行動障害や、睡眠時遊行症(夢遊病)の人も、スマートフォンでその睡眠中の異常行動を録画して受診されるに違いない。

最近はスマートフォンのアプリケーションを用いた自殺予防も行われており、精神科におけるスマートフォンの利用が今後増していくものと思われる。

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