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お怒り症候群とLINE[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.24

中村健一 (ドクターケンクリニック院長)

登録日: 2020-01-02

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「途中で診断が変わるとは何事だ!誤診したことを素直に認めろ!」患者が診察室で怒鳴りだす。多くの原因は診療以外の些細な言葉や態度の問題だ。怒鳴る患者を筆者は「お怒り症候群」と呼んでいる。怒った患者と穏やかに話し合い、丸く収めるのは苦情処理のプロならいざ知らず、筆者のような人格欠陥者に近い粗雑なタイプには不可能だ。「これはこじれるな」と思った患者に対し「お怒り症候群」を阻止する方法はないのか?そこで、外来で面白い実験をしてみた。

「LINE」を使うのである。今や有名になったこのSNS。当医院では自分のIDをQRコードにして、それを印刷したカードを患者に渡している。ただし、「これは複雑だな、こじれるとまずいな」と思った患者に限る。「お友達作戦」である。これで患者と「お友達」になり、情報のやり取りができるようにするワケだ。相手がLINEをやっており、かつ疾患が複雑でこじれそうなごく少数の患者にのみカードを渡している。もちろん患者側に費用はかからない。これが発展すると「オンライン診療」なんてシステムになるのかな?と思いつつ、限られた患者にこっそり行っている。

実際にLINEでつながった後、皮膚の写真を送り付けて診断を聞いてくることもあるけれど、「受診されて頂かないと診断は難しいですね」とお返事して「ネット診断」になる危険性は回避している。医院が休診のときなど、患者がどうしているのか心配なときがある。そんなとき、これが役に立つ。このような手法で一旦「友達」になった患者は「お怒り症候群」にはならない。医師・患者の距離がぐっと近づくとトラブルは激減するし、治療もやりやすくなる。おまけに自分が知らなかったような異業種の世界の友人ができて、医師自身の人生も広がる。この「LINE友人おつくり」ほんの数人の患者でもよいからちょっと始めると面白い。やってみたらいかが?

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