腎血管性高血圧は全高血圧患者の1%程度で,重症あるいは治療抵抗性高血圧で,二次性高血圧を疑われた患者の10%程度である。腎動脈の狭窄が原因で,腎灌流圧の低下によるレニンの過剰産生が高血圧の原因となる。高アルドステロンによる低カリウム(K)血症および代謝性アルカローシスがみられる。若年者では線維筋性異形成が,中・高年者では粥状動脈硬化が狭窄の原因となる。若年女性では大動脈炎症候群も原因となりえる。
高血圧患者において,以下の病歴や所見があれば腎血管性高血圧の存在を疑い診断を進める。
①30歳以下または55歳以上発症の重症高血圧,②利尿薬を含む3剤以上の複数の降圧薬によっても目標血圧に到達しない高血圧(治療抵抗性の高血圧),③全身の動脈硬化性病変,④腹部血管雑音の聴取,⑤片側の腎萎縮(1.5cm以上の左右差),⑥低K血症(代謝性アルカローシス)の合併,⑦レニン-アンジオテンシン(renin-angiotensin:RA)系阻害薬の投与による急激な腎機能の低下。
下記の画像検査で腎動脈狭窄の有無を診断する。
①腎動脈超音波検査:スクリーニング。収縮期最高血流速度(peak systolic velocity:PSV)>180cm/秒,RAR(腎動脈/大動脈PSV比)>3.5が狭窄の判定基準(日本超音波医学会)。
②単純磁気共鳴血管造影(magnetic resonance angiography:MRA):超音波検査の次に行う検査。
③コンピュータ断層撮影血管造影法(computed tomography angiography:CTA):50%以上の腎動脈狭窄に対する感度・特異度は90%以上。ステージG3b以降の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)では腎症のリスクあり。
④ガドリニウム(Gd)造影MRA:精度は高いがステージG4~5のCKDでは腎性全身性線維症(nephrogenic systemic fibrosis:NSF)のリスクが高いため,禁忌である。ステージG3~4でもNSFの可能性はあるので,慎重に適応を考慮する。
⑤腎動脈造影検査:上記①~④でも診断に至らず,血管形成術を考慮する場合は,カテーテルを用いた大動脈造影や選択的腎動脈造影を行う。粥状動脈硬化の強い患者ではコレステロール塞栓症のリスクがある。
機能的診断として血漿レニン活性(plasma renin activity:PRA)を測定するが,PRAは腎血管性高血圧の20%で正常であり,本態性高血圧でもPRA高値を認めることがあるため,あまり診断的価値はない。両側腎動脈狭窄ではPRAは高値とならない。
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