著: | 今西純一(兵庫県立淡路医療センター循環器内科 医長) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 176頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2025年02月14日 |
ISBN: | 978-4-7849-0148-7 |
版数: | 初版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
普段から心エコーを使っている先生方。
肺の存在を敵視していませんか?
本書「心×肺エコー(シンパイエコー)」は、本来邪魔者である肺に真正面から取り組んで、うっ血管理の味方にしてしまおうという新たな取り組みです。
心臓にエコーを当てるなら、ちょっと足(腕)を伸ばして、肺までエコーを当ててみませんか?
肺エコーでうっ血を数値化することで、精度よく・簡単に評価が可能となります。
心不全パンデミック時代の医療にも、一筋の光を当ててくれるはずです。
第 1 章 予備知識編(“To master heart failure,first master congesion”)
1-1:うっ血管理は医者のさじ加減?
1-2:うっ血をステージで考える
第 2 章 心エコーによる心不全管理 習得のためのハウツー
2-1:「心×肺エコー」における心エコーの役割
2-2:左房圧の推定
2-3:右房圧の推定
第 3 章 肺エコーによる心不全管理 習得のためのハウツー
3-1:B-lineってなに?
3-2:B-lineの定義を知ろう
3-3:肺にエコーをあてる前に…(プローブ・向き・時間・機器調整・体位)
3-4:肺にエコーをあててみよう! どこにあてる?
3-5:B-lineでうっ血を定量化しよう!
3-6:本数か点数か?
3-7:B-lineの限界,肺疾患との鑑別ポイントは?
第 4 章 心×肺エコーによる心不全管理 実践編(急性心不全編)
4-1:肺エコーを使って急性心不全を診断する!
4-2:超急性期のB-lineをモニタリングしよう!
4-3:“超急性期〜急性期へ”B-line活用法
4-4:“中期〜退院へ” B-line活用法(治療は上手くいっているか?)
4-5:B-lineと左房圧との関係は?
第 5 章 心×肺エコーによる心不全管理 実践編(慢性心不全編)
5-1:外来肺エコーを行う上で知っておくべきエビデンス
5-2:外来肺エコーの活用法
5-3:肺うっ血の治療中に起こる腎障害をどう考えるか?
5-4:運動負荷と肺エコー
第 6 章 心×肺エコーによる心不全管理 実践編(その他)
6-1:急性冠症候群と心不全
6-2:ショック・低灌流
6-3:急性腎障害(AKI)/急性腎不全
6-4:透析
第 7 章 「心×肺エコー」+α
7-1:心臓と周辺臓器から心不全を考える
7-2:門脈ドプラの撮り方と見方
7-3:腎静脈ドプラの撮り方と見方
7-4:VExUS(Venous Excess Ultrasound)
索引
このようなとてもとてもニッチな本書に興味をもっていただき,ありがとうございます。
本書の目標は,心不全管理における感覚的になりがちな「さじ加減」を,定量的に『見える化』することで,自信をもって日々の心不全管理が行える手助けをすることです。
昨今の医療は,エビデンスやガイドラインでしっかり固められ,心不全領域でもその傾向は顕著なわけですが,そんな中でも「さじ加減」という言葉が思い浮かぶ場面があります。それは利尿薬の使い方です。なぜなら,利尿薬調整の判断材料となる『うっ血』評価が,主観的な要素に依存しているからです。声が大きい先生に「これは肺うっ血がある!」と言われたら,「うん,なんかありそうかも…」と心変わりした経験はないでしょうか。そこで,この曖昧になりがちなうっ血評価に切り込んでいくのが肺エコーというわけです。
おそらく本書を手にとっていただいている方の中には,すでに肺エコーを活用し,救急外来などで心不全診断に役立てているという方もおられるかもしれませんが,それだけで終わらせるのは非常にもったいないです。本書では,肺エコーを心不全が絡むあらゆる場面でフル活用する方法を提案します。急性期の診断から治療中のモニタリング,退院前の評価,そして外来管理での活用まで……。また,『うっ血』評価が重要となる急性腎障害や透析といった個別のケースについても,その可能性を吟味しました。この一冊を通じて「心×肺エコー」を用いた心不全管理への活用法を網羅できるよう構成していますので,ご自身の診療に活かせるところはないか吟味頂ければ幸いです。
確かに,肺エコーは華々しさに欠けると感じる方もいるでしょう。なんせこれまで肺は心エコー検査の際には目の敵にされ,肺エコー画像も「真っ黒,ときどきキラキラ」みたいな……心エコーのようなダイナミックな画像の面白さがないのは認めます。でも,本書を読み通していただいた暁には,この「真っ黒,ときどきキラキラ」,実はその奥に循環生理とも深くつながる興味深い世界が広がっていることを感じていただけたなら,筆者としてこれ以上の喜びはありません。
2025年1月
今西純一