株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「新型コロナウイルス対策:そろそろ、医療機関で『まん延期』の話をしよう」和田耕冶

No.4998 (2020年02月08日発行) P.55

和田耕冶 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2020-02-03

最終更新日: 2020-02-03

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新型コロナウイルスに関する報道や対策はどんどん過熱しているようです。個人レベルでは、この世の終わりのように不安になっている方もいるようです。

そうしたなか、皆さんの医療機関では、国内での感染拡大に備えた対応の準備は進んでいるでしょうか? 指定感染症の施行が前倒しになり、2月1日からとなりました。「指定感染症だから感染症指定医療機関に送ればよいので、うちは関係ない」と思われていないことを願います。

まだ国内の感染例は、見かけ上は「追えている状況」ですが、検査できる施設は地方衛生研究所または国立感染症研究所に限られますし、軽症例も多いことから実際には追えていない状況を想定した方がよいでしょう。指定感染症だからと軽症の患者を入院させることによる感染防護の効果は限定的です。しかし、最近の報道を見ているとそうせざるをえないような雰囲気が出ていることに危惧をしています。読者の皆さんも軽症例にPCRなどの検査を行うというのは意味がないと思いませんか?

香港では、医療機関の職員が一斉に休業して抗議をしているという報道もあります。医療機関での対応において医療職はなんとか説得できても、事務職やその他の職種は不安があるという声も聞きます。今一度この段階から、国内での流行が見られて、感染者が増えた場合には医療機関で受け入れる可能性や基本となる感染対策を見直していただければと思います。

まん延した場合の対策の目的は、新型インフルエンザと同様に次の様になります。

「感染拡大を可能な限り抑制し、国民の生命および健康を保護する。具体的には、感染拡大による流行のピーク時の患者数等をなるべく少なくして医療体制への負荷を軽減するとともに、医療体制の強化を図ることで、患者数等が医療提供のキャパシティを超えないようにして、必要な患者が適切な医療を受けられるようにする。そして、重症者数や死亡者数を減らすこと」です。

新型インフルエンザでも、感染が拡大する前は患者を入院させ、感染拡大の抑制を考えますが、ある程度感染が広がった場合の対策の主眼は、「重症者の治療」、つまり死亡者を減らすということになります。この段階ではすべての医療機関が対応することが求められます。

武漢からの帰国者や、現地での大変な状況、そして各国の入国拒否などの報道に目を奪われ過ぎず、自分自身の医療機関でどうするか、ぜひ1度は会議を行ってください。

併せて、中央法規出版『新型インフルエンザ(A/H1N1)─わが国における対応と今後の課題』https://www.chuohoki.co.jp/topics/info/2001291648.html(無料公開)と、内閣官房サイトの過去のパンデミックレビューは、今後の動向を見通す際の参考になるでしょう。https://www.cas.go.jp/jp/influenza/kako_index.html


関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top