歯牙破折とは,天然歯が何らかの理由で破折した状態をさす(図1)。破折部位別で歯冠破折,歯根破折,歯冠歯根破折に,歯髄の損傷で単純破折と複雑破折に,破折の程度で完全破折と亀裂(クラック)に,原因で外傷性破折と病的破折に分類される。好発部位は上顎前歯部に多く発生する。成人では歯牙脱臼よりも多い。
エナメル質単独あるいは象牙質を含んだ破折がある。エナメル質の破折は無症状の場合が多いが,外傷性歯根膜炎が併発する場合がある。象牙質に至る破折は,冷水痛,温熱痛が生じる。歯髄に至る破折は,冷水痛,温熱痛を生じ,歯冠の着色や出血がみられる。
破折部位により歯頸部に近い位置,中央部,根尖に近い位置のものにわけられる。また,歯冠から歯根への縦破折もある。歯根破折は,咬合痛,打診痛が強く,歯冠の動揺,偏位を生じる。根尖に近い破折では,歯の動揺や偏位は少ない。歯根膜や歯髄からの出血がみられる。
医療面接において,他部外傷の有無,受傷の状況を問診する。歯根破折は視診で確認できないため,歯の動揺,打診に対する反応を調べる。歯冠破折の場合,X線で破折線の到達程度を確認する。
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