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HIV陽性者と陰性者間の挙児希望への具体的対応は?

No.5001 (2020年02月29日発行) P.53

井戸田一朗 (しらかば診療所院長)

上村 悠 (国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)

登録日: 2020-02-28

最終更新日: 2020-02-25

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  • 近年,レトロウイルス療法の進歩と普及に伴い,治療によりウイルスがコントロールされているHIV陽性者は,コンドームを使わない性交渉を行ったとしても,相手にHIVを感染させることはほぼないと言われています。HIV陽性男性と陰性女性,HIV陽性女性と陰性男性のそれぞれのカップルで,挙児の希望があった際の具体的な対応やアドバイスについて,ご教示下さい。国立国際医療研究センター・上村 悠先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    井戸田一朗 しらかば診療所院長


    【回答】

    【片方がHIV陽性のカップルも相手に感染させず挙児可能となった】

    未治療HIV感染者の腟性交によるHIV感染率は挿入側4/1万,被挿入側8/1万程度であるとされています1)。HIV感染者であっても,抗HIV療法により血中のHIVが検出感度(20コピー/mL)未満まで低下している場合,HIVが感染することは男女を問わずほぼないと考えられています。これはU=U:undectable=untransmittableと呼ばれ近年注目されている概念で,挙児希望パートナーの感染予防を検討する際にも重要となります2)

    (1)女性がHIV陽性で,男性がHIV陰性の場合

    推奨の強さはそれぞれ異なりますが,米国保健福祉省(Department of Health and Human Services:DHHS),欧州エイズ臨床学会(European AIDS Clinical Society:EACS),わが国のいずれのガイドラインも,HIV治療によって血中のHIV-RNAが検出感度未満となっている場合,コンドームを用いない性行為(便宜上,以後「自然妊娠」と記載します)が推奨されています2)〜5)。「排卵期の性交渉」と性交渉の回数を数日間に限定することでリスクを減らし,事実上感染はないと考えられています。

    DHHSでは,HIVが検出感度未満を達成していない場合には,HIV陰性者が曝露前予防(pre-expose prophylaxis:PrEP)を行うことも選択肢として上げられていますが,わが国では抗HIV薬を予防に用いることは保険認可されていません。

    その他には,カップルの男性の精子を用いて排卵期に人工授精する選択肢があり,わが国のガイドラインでは採取した精子をそのまま注射器(シリンジ)に入れて女性の腟内に入れるシリンジ法が推奨されています。

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