安倍晋三首相は3月28日、首相官邸で記者会見し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の有力候補として注目されている「アビガン」(一般名:ファビピラビル)について「正式承認に向け治験プロセスを開始する」と表明した。
会見で安倍首相は、COVID-19対策として「有効な治療薬やワクチンの開発を世界の英知を結集して加速していく」としながら、国内で観察研究として使用されている4つの薬剤(アビガン、レムデシビル、カレトラ、オルベスコ)のうち、新型インフルエンザ治療薬アビガンについて「ウイルスの増殖を防ぐ薬であり、既に症状の改善に効果が出ているとの報告もある」と強調。
「アビガンについては海外の多くの国から関心が寄せられており、今後、希望する国々と協力しながら臨床研究を拡大するとともに、薬の増産をスタートする。(COVID-19治療薬として)正式に承認するに当たって必要となる治験プロセスも開始する考えだ」と明言した。
安倍首相は、5つ目の有力候補として注目されている膵炎治療薬「フサン」(一般名:ナファモスタット)にも触れ、「今後、観察研究として、事前に同意を得た患者の皆さんへの投与をスタートする予定」と説明。ほかにも治療薬・ワクチン開発に向けて大学・民間企業で様々な動きが出てきているとし、これらを政府として「力強く後押しする」とした。
アビガンについては、中国の臨床研究で高い改善率が報告されていることから、開発に携わったウイルス学者の白木公康氏(富山大医学部名誉教授)が日本医事新報への緊急寄稿などでCOVID-19ハイリスク患者への使用開始を主張。感染症を専門とする臨床医の菅谷憲夫氏(けいゆう病院感染制御センター長)も「COVID-19流行は日本の緊急事態」として「今こそアビガンの使用を解禁すべき」と訴えるなど、研究者・臨床医から早期承認を求める声が相次いでいた。