株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「補完代替療法に関する臨床試験の報告数は増えている?」大野 智

No.5008 (2020年04月18日発行) P.69

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2020-04-21

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

玉石混淆とされる統合医療・補完代替療法について、厚生労働省は必ずしも規制強化の対象としているわけではない。厚労省が開催した「『統合医療』のあり方に関する検討会」(2012年)では、統合医療・補完代替療法を「推進」するための議論が重ねられてきた。そう聞くと、多くの人が疑問や違和感を抱くかもしれない。もちろん、厚労省も手放しで推進しているわけではなく、補完代替療法に関する科学的知見について現時点では十分に得られているとは言えず、また様々な情報が氾濫していることなど、問題点があることも指摘している。

そのため、厚生労働省は、統合医療・補完代替療法を推進するための条件、言い換えると今後取り組まなければならないこととして次の2つを挙げている。

①補完代替療法の安全性・有効性を検証するための臨床研究を支援する、②補完代替療法の科学的知見を収集しインターネット等を介して情報を提供する。今回は、1つ目の臨床研究支援について具体的な取り組みを紹介する。

統合医療に関する臨床研究支援の最も代表的なものとしては、日本医療研究開発機構(AMED)の“「統合医療」に係る医療の質向上・科学的根拠収集研究事業”がある。2015年度のAMED発足時から継続されており、今年度も漢方、鍼灸、ヨガを用いた臨床試験への研究助成を行っている。対象疾患は、脳神経疾患、フレイル、がん、線維筋痛症など多岐にわたる。採択課題の詳細についてはAMED当該事業のサイト(https://www.amed.go.jp/program/list/05/01/003.html)を参照していただきたい。

なお、読者の先生方の多くは、補完代替療法に関する臨床試験の報告はほとんどないと思われているかもしれない。ちなみに、PubMedで“complementary therapies(補完療法)”をキーワードに検索するとランダム化比較試験の報告件数は、2010年以降、毎年約1000件の報告数がある。もちろん、すべての報告が補完代替療法の有効性を立証したものではなくnegative dataも含まれているが、近年、補完代替療法に関する臨床試験の報告数は増えているという事実を是非知っておいていただけると幸いである。

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法③]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top