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遠隔講義[なかのとおるのええ加減でいきまっせ!(299)]

No.5009 (2020年04月25日発行) P.67

仲野 徹 (大阪大学病理学教授)

登録日: 2020-04-22

最終更新日: 2020-04-21

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4月は講義月間である。今年は病理学総論に加えて、新入生向けのゼミ『健康と医学について考えよう』も開講なので、90分換算で週に7コマの予定であった(過去完了形)。

前後の準備などをいれると、エフォートの4分の3くらいが必要になる。ところが、非常事態宣言が出たこともあって、少なくともGWまですべてキャンセル。あまりの暇さに途方に暮れてしまっているような毎日だ。

休講にするとスケジュールが後倒しになって、にっちもさっちもいかなくなる。なので、在校生には遠隔授業をするようにとのお達しがあった。はて、どうするか。

Zoomというセミナーやミーティングをオンラインで開催できるアプリを使って講義を配信することができるとのこと。しかし、そんなのはイヤだ。

邪魔くさいからではない。とても視聴に耐えられる講義ができると思えないからである。お話などというのは、聴衆がいるからこそできるのだ。オンライン講演の経験があるが、どうしてこんなに難しいのかと不思議なくらい難しい。わずか30分程度の講演で、喉がカラカラになった。オンラインで質問を受け付けることはできるが、ギャグをかましても聴衆の反応などわからない。

なので、自学自習方式にした。教科書は例年通りロビンスの『Basic Pathology』、英語である。教科書ガイドみたいなプリントを配布して自習。毎回、質問やらなんやらのアンケートを提出させる、というやり方だ。

相手は100人以上なので、メールでのやりとりになると大変かと思っていた。しかし、我らが大阪大学には、CLE授業支援システムというのがあって、それを利用するといとも簡単にできて一安心。そういった形式の「講義」、学生たちの反応も悪くない。

考えてみれば、勉強というのは個人でもできるはずだし、そうなるべきだ。教科書を熟読して理解する、という学び方を身につけるいいチャンスではないか。ただ、講義以上に、学生間の理解度と到達度に差がつきそうなのが心配ではある。

講義やら会議やら、いままでと違うやり方にトライするのに願ってもないチャンスだ。平時ならできそうもない変革が可能になるかもしれない。というか、それくらいのことをして、ちょっとでもポジティブな面を見つけていかないと、とても長丁場を乗り切れそうな気がしませんわ、ホンマに。

なかののつぶやき
「大阪大学CLEは、Collaboration and Learning Environmentの略です。協力して学ぶための環境なんですかね、ようわかりませんが。何年も前に構築されたもので、たぶん、ほとんど使われてこなかったでしょう。かなり大がかりなシステムなので、相当な経費がかかったに違いない。すこし前までなら、また無駄遣いしてからにと、腹をたててたはずですが、今となっては、よくぞ作っておいてくれました、という感謝です」

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