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教科書の行間には未知満々[エッセイ]

No.4716 (2014年09月13日発行) P.70

菅 弘之 ( 国立循環器病研究センター名誉所長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-24

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  • 教科書の各頁には数十の記述行があり、ほぼ同数同幅の行間がある。学生は記述内容を読んで知識を得て、その分野の学科試験に合格することができる。

    医学部卒業後医師となり医療に従事したり研究を開始して、関連分野の専門書や論文を読むと、教科書には書かれていない専門内容が沢山あることが分かる。そのような専門書や論文にもやはり行間がある。

    筆者は医学生時代に心臓ポンプ機能(スターリングの法則など)の生理学に興味を持ち、放課後は生理学教室に顔を出して、動物実験を見せてもらったり、専門書を読ませてもらったり、疑問点を質問させてもらったりして、心臓ポンプ機能に関して未知なことが沢山あるのを実感した。疑問点を欧米の代表的生理学雑誌で探したが、満足する記述には遭遇しなかった。

    筆者は子ども時代から電気機械工作の趣味があり、それを生かして心臓ポンプ機能を少しでも解明できればと考えて、卒業後に東大医用電子研究室の大学院生となった。そこで実験動物の心臓ポンプ機能の研究を始めて間もなく、収縮心臓の新規概念としての可変弾性特性を発見することができ、論文をまとめ、医学博士となった。この発見により、理論的に心臓収縮が求めるエネルギー量の推定が可能となることを作業仮説として、動物心臓研究を展開させ、実験的に検証することができた。

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