【質問者】
安川 力 名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学准教授
【様々な受傷機転により起こる。注意深い問診と診察により早急な対処をするよう心がける】
穿孔性眼外傷・眼球破裂は,何らかの外的要因で眼球を構成している角膜や強膜が裂けている状態を指します。近年,検査機器や治療技術の進化により眼疾患の視力予後は改善していますが,この2つは今もなお視力予後が不良です。
穿孔性眼外傷・眼球破裂の受傷機転に関して,国内の基幹病院10施設の約400例をまとめたデータから,就労,転倒,交通事故,スポーツの順で多いことがわかりました1)。就労は比較的若年で男性の割合が高く,眼球破裂より穿孔性眼外傷が多い傾向でした。芝刈り機や釘,ワイヤーブラシ,サンダー,針金などが具体的な原因として挙げられます。受傷時の保護ゴーグルの装用率は1.3%とかなり低い結果でした。保護ゴーグルを装用していればこのような眼球穿孔は防げた可能性があります。就労の次に転倒が原因として多い結果でした。平均年齢は73歳と高齢で女性の割合が高い傾向にありました。穿孔性眼外傷よりも眼球破裂が多く,比較的大きな裂創であり視力予後はすべての受傷機転の中で最も不良でした2)。高齢化率の上昇する先進諸国では,今後転倒による眼外傷が増加する可能性があります。交通事故による受傷では自動四輪車が最も多く,次に自転車によるものが多い結果でした。しかし感染例はなく,比較的視力予後が良好でした3)。交通事故では事故関連者がいることが多いため,医療機関を早期に受診でき,受傷から初期対応までの時間が短いことが関連していると考えられます。スポーツ外傷ではゴルフと釣りによるものが多く,他の受傷機転と比較して若年であり,感染の合併が多い結果でした4)。スポーツ外傷は屋外での受傷であることから,受傷と同時に細菌が侵入しやすいと考えられます。
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