編著: | 谷戸正樹(島根大学医学部眼科学講座 教授) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 424頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2024年11月20日 |
ISBN: | 978-4-7849-6323-2 |
版数: | 第2版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
◆「基礎から学べるこんな手術書が欲しかった」を集約! 基本手術の手技とピットフォールをわかりやすく解説した「はじめての手術」書です。
◆多数ある眼科手術の中から、実際にレジデントが行う機会が多い術式や、手術件数が多く、携わる可能性が高い術式を厳選。
◆フルカラーで見やすい紙面とともに、術野写真やイラストに解説を充実させました。
◆まるで手術室を見学しているかのような動画はすべて字幕解説付き。本文と動画を相互に繰り返し参照することで、効率良く理解を深めることができます。
1章 手術に必要な局所解剖
1 眼瞼・涙道の解剖 高橋靖弘
2 角膜・結膜・強膜・外眼筋の解剖 小幡博人
3 水晶体・隅角・毛様体の解剖 井上俊洋
4 硝子体・網膜・脈絡膜の解剖 馬場隆之
2章 手術機器と基本手技
1 顕微鏡の構造 金井聖典,坂口裕和
2 白内障手術機器の仕組み 松島博之
3 切開創の種類と特徴 藤本久貴,家木良彰
4 縫合糸と縫合方法 眞野福太郎,日下俊次
5 粘弾性物質(OVD)の種類と特徴 渡辺義浩,小早川信一郎
6 眼科局所麻酔の方法 奥田徹彦,東出朋巳
7 術野の消毒,ドレーピング 原 克典
3章 眼瞼・眼窩・斜視・涙道手術
1 霰粒腫手術 横塚奈央
2 睫毛内反症手術(小児) 平野香織
3 眼瞼内反症手術(高齢者) 林田健志,山川 翔
4 後転術,前転術 後関利明
5 涙点プラグ 山西竜太郎,内野美樹
6 涙管チューブ挿入術(内視鏡を使用するもの) 宮崎千歌
7 眼瞼裂傷・涙小管断裂縫合術 清水英幸
4章 結膜・角膜・強膜の手術
1 翼状片手術(有茎結膜弁移植) 加瀬 諭
2 翼状片手術(遊離結膜弁移植) 井上幸次,春木智子
3 再発翼状片手術 上松聖典
4 全層角膜移植 岩川佳佑,近間泰一郎
5 角膜内皮移植 鈴木孝典,山口剛史
6 ドナー眼球摘出,ドナー強角膜片作成 鈴木孝典,山口剛史
7 結膜裂傷・角膜裂傷・強膜裂傷縫合術 岡本史樹
5章 白内障手術
1 超音波乳化吸引術(D&C) 河野通大
2 超音波乳化吸引術(Phaco chop) 杉原一暢
3 チン小帯脆弱例への対処 西村栄一
4 小瞳孔例への対処,前嚢染色 神谷和孝
5 破嚢時の対応(前部硝子体切除,IOL嚢外固定) 庄司拓平
6 水晶体嚢内摘出術 松岡陽太郎
7 眼内レンズ強膜内固定(ダブルニードル・フランジ法) 清水啓史
6章 緑内障手術
1 iStent 笠原正行
2 マイクロフックトラベクロトミー 佐野一矢
3 トラベクレクトミー(円蓋部基底) 奥道秀明
4 プリザーフロマイクロシャント 谷戸正樹
5 レーザースーチャーライシス 齋藤 瞳
6 ニードリング(濾過胞再建術) 齋藤 瞳
7 アーメド緑内障バルブ(前房・毛様溝挿入) 浪口孝治
8 バルベルト緑内障インプラント(扁平部挿入) 岩﨑健太郎
7章 網膜硝子体手術
1 抗VEGF薬硝子体内注射 今永直也,古泉英貴
2 網膜裂孔に対する網膜光凝固術 安川 力
3 汎網膜光凝固術 新田啓介,秋山英雄
4 裂孔原性網膜剥離に対する硝子体手術 松井良諭
5 黄斑前膜,黄斑円孔に対する極小切開硝子体手術 塩出雄亮,森實祐基
6 網膜下血腫移動術 緒方惟彦,木村和博
7 増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術 國方彦志
8 強膜バックリング手術(強膜内陥術) 井上 真
9 細菌性眼内炎に対する対処法 中静裕之
索 引
第2版 序 文
眼科手術の発展は目覚ましく,その技術は患者さんのQOLの向上や維持に大きく貢献しています。特に,超高齢社会の現代において,視力を守る我々眼科医の役割は一層重要となっています。手術を行う医師はもちろんのこと,手術を直接行わない医師も,適切な手術適応の判断や術後の経過観察を行うためには,眼科手術の基本的な知識に精通していることが求められます。
本書『眼科レジデントのためのベーシック手術 第2版』は,これから眼科手術を学び始める研修医や,学び始めて間もない眼科研修医のために,多数ある眼科手術の中から,実際にレジデントが行う機会が多い術式や,手術件数が多く,助手や主治医として携わる可能性が高い術式を厳選して取り上げています。術式の選定に際しては,眼科研修医ガイドラインおよび眼科専門医認定試験の出題基準を参考にしました。
初版は多くの読者から高い評価をいただきましたが,第2版でも基本的な構成は維持しつつ,新しい術式の追加や,最新の手術デバイスや薬剤に関する情報をアップデートしています。また,局所解剖や手術器具の解説,診断方法,術式の適応,手技を詳細に説明し,手術後の管理方法も含めて,バーチャル手術見学のように理解できる構成となっています。手術動画を活用し,視覚的に理解を深める工夫もさらにブラッシュアップされています。
本書が,眼科医としての知識と技術を高め,ひいては患者さんに対して安全で効果的な手術治療を提供する一助となれば幸いです。
初版で第3章7をご執筆いただいた故・上田幸典先生に深く感謝申し上げます。また,本書の企画・校正・出版にご尽力いただきました日本医事新報社の長沢雅氏にも深く感謝申し上げます。
2024年11月吉日
島根大学医学部眼科学講座 教授
谷戸正樹
初版 序 文
私が眼科医になった当時は,白内障手術は“難しい”超音波ではなく,まずは,ECCEから習い,硝子体手術はトップサージャンだけが行う特別な手技でした。角膜移植も,全層角膜移植が主で,あとは,一部の施設で表層角膜移植を行っているくらいでした。
涙道手術も鼻内法は存在せず,DCRに“鼻外”という言葉はついていませんでした。その後,私が眼科医として過ごしたこの四半世紀の眼科手術の発展はめざましく,ほぼすべての中間透光体の混濁による視力低下は何らかの手術対象となり,神経機能の低下による疾患への手術治療の試みも多くなされ,小切開・低侵襲・限局アプローチの術式が日常的に行われるようになりました。
本邦で行われる外科手術件数の2割弱が眼科手術であるとの統計があります。手術による治療は,しばしば劇的な視機能や病態の改善を得ることができるため,その適切な施行は患者のQOV・QOLに大きく貢献します。一方で,手術は侵襲・不可逆の変化をきたす治療法であり,不適切な手術や術後管理によるマイナスの効果はしばしば薬物治療や保存的な治療の副効果を上回ります。自らが手術を行う眼外科医はもちろん,手術をしない眼科医も含めて,眼科を標榜する医師,眼科専門医を志す若手医師は,眼科領域で行われる手術についてその内容や主たる適応について学ぶ必要があります。
本書では,多数ある眼科手術の中から,基本的と考えられる術式や施行頻度の高い術式を厳選し,気鋭の眼外科医に解説して頂きました。本書に紹介する術式は,これから眼科専門医の取得を目指す若手の眼科医師を主たる学習者であることを念頭に,眼科研修医ガイドラインおよび眼科専門医認定試験出題基準を参考に選定しました。1,2章では,眼科手術を行う際に必要な局所解剖と手術機器・基本手技に関して総論的な解説を行い,3章以降の各論では,具体的な術式を動画と共に解説頂くことに加えて,術式の適応を決定する際に必要な診断方法,手術に必要な器具,術後管理に必要な知識についても解説しています。若手だけではなく,あらゆるレベルの術者にとって,「疑似手術室見学」と言えるような構成になっています。また,各章にコラムとして掲載される,「大切なこと」,「よくある質問」,「若手医師の間に必ず身につけておいて欲しいこと」からは,各術者の眼外科医としての哲学やプライドを感じ取ることができると思います。
本書が,本書を手に取られた皆様を通じて,眼疾患と戦われる患者さんへの安全で効果の高い手術治療提供の一助となれば幸いです。
本書の企画・校正・出版にご尽力頂きました日本医事新報社の長沢雅氏,吉本軌道氏に感謝いたします。
2021年11月吉日
島根大学医学部眼科学講座 教授
谷戸正樹